著者
Minoru Okuda Atsushi Usami Hirotaka Itoh Satoshi Ogino
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
Nippon Jibiinkoka Gakkai Kaiho (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.1181-1188, 2002-12-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
29
被引用文献数
4 7

アレルギー性鼻炎患者(AR)における昆虫アレルゲンの症状への関与を調べるため,560例のARを対象にしてガ,ユスリカ,ゴキブリを含む13アレルゲンに対するIgE抗体を測定した.また,65例の患者でこれら3種の昆虫の鼻誘発試験を実施した.ガ,ユスリカおよびゴキブリに対するIgE抗体保有率はそれぞれ32.5%,16.1%,13.4%であった.これらIgE抗体保有率には,地域,年齢,治療および合併症による差は認められなかった.鼻誘発試験で陽性と判定される割合は,RASTクラスが高いほど多くなる傾向があった.とくにゴキブリ,ガにおいて,RASTクラス3以上では,各々55.6%および61.5%が鼻誘発試験に陽性を示した.昆虫間のIgE抗体価の相関を検討したところ,ガ,ユスリカ間には強い相関が認められ共通抗原性を示唆したが,ゴキブリ,ガ間およびゴキブリ,ユスリカ間では強い相関は認められなかった.また,いずれの昆虫もヤケヒョウヒダニおよび室内塵に対するIgE抗体価との相関は認めなかった.以上の結果,日本においてガ,ユスリカ,ゴキブリは,アレルギー性鼻炎を起こす原因となっていることが示された.
著者
Akihiko Nakamura Tadao Asai Kazuhiro Yoshida Kohtaro Baba Kimihiro Nakae
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
Nippon Jibiinkoka Gakkai Kaiho (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.215-224, 2002-03-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
40
被引用文献数
12 10

アレルギー性鼻炎に関する全国疫学調査を行った. 全国の耳鼻咽喉科医師9471名およびその家族を対象とし, 1998年6月にアレルギー性鼻炎に関する質問用紙を郵送し, 同年9月末日までに回収した. 回収率は42.8%で, 17301名が対象になった. 年齢構成を日本人人口ものと比較すると調査対象者は20歳代がやや多く, 60歳以上特に男性に多い以外ほとんど差異はみられなかった.スギ花粉症の有症率は, 人口分布調整を行ったところ17.3%であった. 全体に日本海側, 瀬戸内地方に比べ太平洋側, 中部地方に高く, 高緯度あるいは低緯度地域で有症率は低かった. 年齢層別有症率をみると, 10歳代で急激に増加し60歳代になると低下した. スギ花粉飛散が多い地域で有症率が高く, 住環境に関しては郊外, 住宅地, 都会の順で高かった.スギ以外の花粉症についても同様に検討した. 年齢層別有症率および住環境と有症率との関係は, スギ花粉症とほぼ同様の結果で, 人口分布調整後の有症率は11.7%であった.通年性アレルギー性鼻炎の人口分布調整後の有症率は19.8%で, スギ花粉症に比べやや高率であった. 年齢層別有症率は, 5~9歳で急激な上昇がみられ, スギ花粉より若年者での発症が多く, 60歳以降での有症率の低下はみられなかった. スギ花粉症と異なり, 地域や住環境による有症率の差異はみられなかった.今回の調査は全国に住居する耳鼻咽喉科医師およびその家族を対象としており, スギ花粉症はもとより通年性アレルギー性鼻炎の地域による有症率の差異を知ることができた. また回収率も他のアンケート調査より優れており, 回答内容の信用度も高いため, 日本全国のスギを主としたアレルギー性鼻炎に関する疫学的調査として有用なものと思われた.
著者
Tadao Enomoto Takema Sakoda Yoshihiro Dake Akira Shibano Yuko Saitoh Masanori Takahashi Hideyo Sogo Yoshiaki Fujiki
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
Nippon Jibiinkoka Gakkai Kaiho (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.102, no.12, pp.1311-1317, 1999-12-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

和歌山県下のスギ花粉症の現状を把握するため, 1321例の自然集団を対象として, スギ特異的IgE抗体をルミワードイムノアッセイシステムで測定した. その結果, クラス2以上の陽性者は30.9%であった. 過去の同様の調査, 13.9% (1985年), 18.3% (1990年) より明らかに増加していた. 性別では女性よりも男性に多かった. 年齢では20歳代に陽性者が最も多く, 加齢と共にその陽性率は減少した.スギ特異IgE抗体陽性率に及ぼす各種の環境要因について検討したが, 過去の調査では検討学的に有意差のでた項目で有意差はみられず, 陽性者増加の要因を明らかにすることはできなかった.