著者
降簱 光太郎 Kotaro FURIHATA
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.103-128, 2023-03-01

現代の医療において、高度化・複雑化に伴う業務の増大による医療現場の疲弊が指摘されている一方、質が高く、安心・安全な医療の実現を求める患者・家族の声が高まるなど、医療の在り方が根本的に問われている。こうした現在の医療のあり方を大きく変え得る取組として「チーム医療」がある。チームとして「目的と情報」を共有した上で、各医療スタッフの専門性を踏まえ、信任するとともに、医療スタッフ間の連携および補完を十全に進める基本的な考え方は、様々な医療現場で通底性がある。実際に、様々な医療現場で「チーム医療」が実践されている。他方、「医師の働き方改革」における医師の業務負担軽減のため、医師と他の医療職間で行う「タスク・シフト(業務の移管)、タスク・シェア(業務の共同化)」を前提とした新しいチーム医療が求められている。その中で、タスク・シフト/シェアの受け入れ先である職能において、医師事務作業補助者が取り上げられている。診療情報管理士が行う診療情報の監査、医師事務作業補助者が行う診療録等の文書作成補助業務は、医師等の負担軽減、提供する医療の質の向上、医療安全の確保の点から非常に重要である。そこで、診療情報管理士学会が公開している「診療情報管理業務指針 2021」および日本医師事務作業補助者協会が公開している「医師事務作業補助者業務指針案件」をテキストマイニングし、両職種の連携について明示的なデータとして示すことができるかを試みた。結果、①文書に関する連携について、診療情報管理士と医師事務作業補助者は、文書の様式や運用手順の整備内容を院内ルールとして作成し、さらに、診療情報管理士は、文書や記録の整合性・適切性・妥当性等の点検・確認し、その結果を医師事務作業補助者にフィードバックし、改善・整備の支援を行う、②診療情報管理業務は、診療情報管理士だけで行われるものではなく、関連する医療従事者・関係者との分担・連携によって実施されるものであり、医師事務作業補助者は、診療録の代行入力を認められている唯一の職種として、診療録記載の質向上を介した連携を行う、③診療情報管理士は、標準的な退院時サマリーの作成指針を用いて、院内ルールにその内容を反映させるなど、医師事務作業補助者に対して標準的な退院時サマリー作成のサポートを行う。このことについて、両職種の連携に関する明示的なデータを示すことができた。さらに、両職種において、管理者との強い連携の必要性が示され、また、それぞれの職種の専門性が、それぞれの業務指針の特徴語に影響を与えていることが示唆された。このことについても、客観的なデータとして明示することができた。
著者
降簱 光太郎 Kotaro FURIHATA
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.61-86, 2022-09-30

現在、我が国では超高齢社会が進展する状況であり、健康・医療・介護分野の情報やICTを積極的に活用することで国民一人ひとりの健康寿命の延伸や国民の利便性向上を図るとともに、医療や介護現場において、サービスの質を維持・向上しつつ、その効率化や生産性の向上を図っていくことが求められている。このような医療・介護分野を取り巻く環境が変化する趨向において、日本診療情報管理学会は、今後の診療情報管理業務で留意すべき点を改訂した「診療情報管理士業務指針2021」を公開した。診療情報管理士業務指針の初版「診療情報管理士業務指針2011」の訂正版である「診療情報管理士業務指針2016」および最新版「診療情報管理士業務指針2021」をテキストマイニング手法を用いて統計的分析を行い、診療情報管理業務の経時的な変遷を客観的なデータとして示すことができるかを試みた。結果、診療情報管理士の業務が、①地域の医療介護情報連携の必要性の高まり、②診療記録に関する標準化、③日本政府・WHO・海外の関係団体の動向、④個人情報保護に関する社会情勢や患者・利用者等の意識の変化、⑤医療のDX・チーム医療・医療安全・医療の質向上の推進、⑥診療情報管理部門の組織的確立化、により、経時的に変遷していることを詳らかにすることができた。さらに、診療情報管理士は診療情報の専門家として、その業務の本来の趣旨・目的を理解し、標準化・共通化と相互の参照手順の整備に関与し、医療だけではなく、介護領域においても診療情報の共有を徹底することに努める必要があり、WHOや海外の関係団体の動向、介護の情報化に取り組む我が国の方針の下、診療情報管理士の業務は、急性期医療の質の向上に向けた、言わば縦方向への拡大と、急性期医療と在宅医療・介護の連携に伴う横方向へ拡大する趨勢であることを客観的なデータとして明示することができた。
著者
降簱 光太郎 Kotaro FURIHATA
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.63-81, 2022-02-25

日本診療情報管理学会は、診療情報の管理・点検と、それに関連した業務を専門的に行う診療情報管理士が、円滑かつ合理的に業務を実施し、医療提供における本来の役割を担い得るよう、2011年に「診療情報管理士業務指針」を公開している。近年の動向を受けて、今後の診療情報管理業務で留意すべき点を改訂した「診療情報管理士業務指針2021」について、テキストマイニング手法を用いて統計的分析を行う。現下の診療情報管理士の業務内容および今後の方向性について、さらに、「診療情報管理士業務指針2021」の成り立ちについて、客観的なデータとして可視化し、構造的に詳らかにすることができるかを試みた。結果、業務指針として、専門職としての定義や業務内容に関連する語が網羅され、さらに、診療情報管理士の地歩として、病院内の部門連携などの医療領域だけではなく、情報管理の専門職の立場から介護領域においての役割が求められている状況であることが説示されていることを明視化、確認することができた。探索的分析の結果、「診療情報管理士業務指針2021」を改訂した大きな理由として、日本医療情報学会と日本診療情報管理学会が合同で取りまとめた「退院サマリー作成に関するガイダンス」の活用と普及が析出された。「診療情報管理士業務指針2021」の章立てとして、章の棲み分けができていること、そのコンテキストにおいて「介護」「電子カルテ」「システム」「退院サマリー」「標準化」について、待ち望まれる業務として位置付けていることを客観的なデータとして可視化し、構造的に詳らかにすることができた。