著者
中西 一弘 Kazuhiro NAKANISHI 淑徳大学短期大学部こども学科 Shukutoku University Junior College
出版者
淑徳大学短期大学部紀要委員会
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.165-179, 2015-02-25

「小学校学習指導要領」ではマット運動における「側方倒立回転」の練習方法について,「支持での川跳び」「腕立て横跳び越し」などの運動を「側方倒立回転」へ発展させる予備的な運動として紹介している。これらの運動では,「またぎ越す」ように行うことにより「踏み切り足」と「振り上げ足」の区別が出現してくる。一方,近年「縦向き立ち」からの「片足踏み切りによる倒立」を練習した後で倒立にひねりを加えることにより「側方倒立回転」を習得する練習方法が体操競技関係者から提唱されている。この場合,倒立を練習する時点で「踏み切り足」と「振り上げ足」が決定する。以上のように,それぞれの「側方倒立回転」の練習方法には,「踏み切り足」と「振り上げ足」の決定に影響する異なる要因が存在するものと考えられる。本研究では,この2種類の方法で「側方倒立回転」を練習し,「踏み切り足」「振り上げ足」の決定に関して,練習方法と「側性」との関係性を明らかにした。
著者
打浪 文子
出版者
淑徳大学短期大学部
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
no.54, pp.105-120, 2015

本稿では、軽度から中度の知的障害者16名に対して、通信機能を持つ情報機器(PC及び携帯電話)の利用状況及びその具体的様相を把握し課題を析出するために、半構造化面接法による聞き取り調査を実施した。調査結果から、知的障害者のPC利用は自由に利用できる少数と利用環境の整わない多数に二分されることを明らかにした。また携帯電話は対象者全員に利用経験があり、情報伝達や支援代替的なツールとして活用されていること、通話以外の固有機能も幅広く利用されていることを明らかにした。健常者社会との情報格差を減らし彼らの社会参加を促進するために、技能習得の機会の拡大、知的障害者が「利用しやすい」ことに着目した情報機器の活用方法の検討、公的な知的障害者向けの情報支援施策の展開、当事者・家族・支援者への意識啓発が今後の社会的課題である。
著者
降簱 光太郎 Kotaro FURIHATA
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.103-128, 2023-03-01

現代の医療において、高度化・複雑化に伴う業務の増大による医療現場の疲弊が指摘されている一方、質が高く、安心・安全な医療の実現を求める患者・家族の声が高まるなど、医療の在り方が根本的に問われている。こうした現在の医療のあり方を大きく変え得る取組として「チーム医療」がある。チームとして「目的と情報」を共有した上で、各医療スタッフの専門性を踏まえ、信任するとともに、医療スタッフ間の連携および補完を十全に進める基本的な考え方は、様々な医療現場で通底性がある。実際に、様々な医療現場で「チーム医療」が実践されている。他方、「医師の働き方改革」における医師の業務負担軽減のため、医師と他の医療職間で行う「タスク・シフト(業務の移管)、タスク・シェア(業務の共同化)」を前提とした新しいチーム医療が求められている。その中で、タスク・シフト/シェアの受け入れ先である職能において、医師事務作業補助者が取り上げられている。診療情報管理士が行う診療情報の監査、医師事務作業補助者が行う診療録等の文書作成補助業務は、医師等の負担軽減、提供する医療の質の向上、医療安全の確保の点から非常に重要である。そこで、診療情報管理士学会が公開している「診療情報管理業務指針 2021」および日本医師事務作業補助者協会が公開している「医師事務作業補助者業務指針案件」をテキストマイニングし、両職種の連携について明示的なデータとして示すことができるかを試みた。結果、①文書に関する連携について、診療情報管理士と医師事務作業補助者は、文書の様式や運用手順の整備内容を院内ルールとして作成し、さらに、診療情報管理士は、文書や記録の整合性・適切性・妥当性等の点検・確認し、その結果を医師事務作業補助者にフィードバックし、改善・整備の支援を行う、②診療情報管理業務は、診療情報管理士だけで行われるものではなく、関連する医療従事者・関係者との分担・連携によって実施されるものであり、医師事務作業補助者は、診療録の代行入力を認められている唯一の職種として、診療録記載の質向上を介した連携を行う、③診療情報管理士は、標準的な退院時サマリーの作成指針を用いて、院内ルールにその内容を反映させるなど、医師事務作業補助者に対して標準的な退院時サマリー作成のサポートを行う。このことについて、両職種の連携に関する明示的なデータを示すことができた。さらに、両職種において、管理者との強い連携の必要性が示され、また、それぞれの職種の専門性が、それぞれの業務指針の特徴語に影響を与えていることが示唆された。このことについても、客観的なデータとして明示することができた。
著者
降簱 光太郎 Kotaro FURIHATA
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.61-86, 2022-09-30

現在、我が国では超高齢社会が進展する状況であり、健康・医療・介護分野の情報やICTを積極的に活用することで国民一人ひとりの健康寿命の延伸や国民の利便性向上を図るとともに、医療や介護現場において、サービスの質を維持・向上しつつ、その効率化や生産性の向上を図っていくことが求められている。このような医療・介護分野を取り巻く環境が変化する趨向において、日本診療情報管理学会は、今後の診療情報管理業務で留意すべき点を改訂した「診療情報管理士業務指針2021」を公開した。診療情報管理士業務指針の初版「診療情報管理士業務指針2011」の訂正版である「診療情報管理士業務指針2016」および最新版「診療情報管理士業務指針2021」をテキストマイニング手法を用いて統計的分析を行い、診療情報管理業務の経時的な変遷を客観的なデータとして示すことができるかを試みた。結果、診療情報管理士の業務が、①地域の医療介護情報連携の必要性の高まり、②診療記録に関する標準化、③日本政府・WHO・海外の関係団体の動向、④個人情報保護に関する社会情勢や患者・利用者等の意識の変化、⑤医療のDX・チーム医療・医療安全・医療の質向上の推進、⑥診療情報管理部門の組織的確立化、により、経時的に変遷していることを詳らかにすることができた。さらに、診療情報管理士は診療情報の専門家として、その業務の本来の趣旨・目的を理解し、標準化・共通化と相互の参照手順の整備に関与し、医療だけではなく、介護領域においても診療情報の共有を徹底することに努める必要があり、WHOや海外の関係団体の動向、介護の情報化に取り組む我が国の方針の下、診療情報管理士の業務は、急性期医療の質の向上に向けた、言わば縦方向への拡大と、急性期医療と在宅医療・介護の連携に伴う横方向へ拡大する趨勢であることを客観的なデータとして明示することができた。
著者
降簱 光太郎 Kotaro FURIHATA
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.63-81, 2022-02-25

日本診療情報管理学会は、診療情報の管理・点検と、それに関連した業務を専門的に行う診療情報管理士が、円滑かつ合理的に業務を実施し、医療提供における本来の役割を担い得るよう、2011年に「診療情報管理士業務指針」を公開している。近年の動向を受けて、今後の診療情報管理業務で留意すべき点を改訂した「診療情報管理士業務指針2021」について、テキストマイニング手法を用いて統計的分析を行う。現下の診療情報管理士の業務内容および今後の方向性について、さらに、「診療情報管理士業務指針2021」の成り立ちについて、客観的なデータとして可視化し、構造的に詳らかにすることができるかを試みた。結果、業務指針として、専門職としての定義や業務内容に関連する語が網羅され、さらに、診療情報管理士の地歩として、病院内の部門連携などの医療領域だけではなく、情報管理の専門職の立場から介護領域においての役割が求められている状況であることが説示されていることを明視化、確認することができた。探索的分析の結果、「診療情報管理士業務指針2021」を改訂した大きな理由として、日本医療情報学会と日本診療情報管理学会が合同で取りまとめた「退院サマリー作成に関するガイダンス」の活用と普及が析出された。「診療情報管理士業務指針2021」の章立てとして、章の棲み分けができていること、そのコンテキストにおいて「介護」「電子カルテ」「システム」「退院サマリー」「標準化」について、待ち望まれる業務として位置付けていることを客観的なデータとして可視化し、構造的に詳らかにすることができた。
著者
勝亦 麻子 Asako KATSUMATA
出版者
淑徳大学短期大学部紀要委員会
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
no.63, pp.77-87, 2021

本研究は、DV被害者の気持ちや生活の変化、被害年数が経過したDVの問題解決の難しさ、および将来加害者に介護が必要になった時の気持ちを明らかにすることによって、長期化したDVの解決方法およびDV被害が高齢期まで継続することを防ぐ方法を探ることを目的とした。調査の方法は、まずDV被害者支援に関する研修会および、被害者向けの心の回復を目指す講座の参加者にアンケート調査を行い、その際インタビュー調査の協力も可能であると記載があり、同意が得られたDV被害者15名に2010年9月から11月にインタビュー調査を行った。その結果、被害が長期化すると、子どもとの関係が悪化したり、加害者への情や家族のしがらみなどが増えて別れにくくなることが明らかになった。また将来の介護問題を避けるために離婚した人がいる一方、加害者が要介護になったらDVの復讐をする可能性も示唆された。DVが長期化した場合の家庭生活の変化や、家族構成員へ及ぼす悪影響等を総合的に、しかもできるだけ早いうちにDV被害者に客観的に把握させて自立を促したり、大事な人間関係のつながりをサポートしたり、喪失感を癒す支援も必要ではないかと考える。
著者
飯岡 由美子 長谷川 美貴子 Yumiko Iioka Mikiko Hasegawa
雑誌
淑徳大学短期大学部研究紀要 = Shukutoku University Junior College bulletin (ISSN:21887438)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.123-141, 2017-02-15

高齢者福祉施設の援助者(特に介護福祉士)を対象に、ケアにおける共感性とバーンアウト傾向の関係性を明らかにするための質問紙法調査を行った。その結果は以下の通りである。①バーンアウト傾向と共感性には負の相関がみられた。②介護経験年数毎に特徴をみると、バーンアウト傾向は新人(1~2年目)から中堅(6~8年目)まで増え続けるが、達人(9年目)以降は減少し、新人の頃よりも低くなる。共感性はバーンアウトとは逆の傾向を示し、働き続けることによって低下していくが、9年目以降より高くなっていく。③利用者との関わりの中で、援助者がストレスを一番感じるのは、利用者が同じことを繰り返したり意思疎通困難な状況、次に拒否的な態度、三番目は暴力や暴言であった。④バーンアウト傾向の高い人は、認知的共感性の「視点取得」や「想像性」が低い。⑤心揺さぶられるほどの体験とバーンアウト傾向の関係をみると、バーンアウト傾向が一番高いのは、「ショックな体験」があり「嬉しい体験」の無い人であった。また、「ショックな体験」があったとしても「嬉しい体験」があると、バーンアウト傾向は低いという結果になった。超高齢社会であるわが国にとって、高齢者福祉施設への社会的ニーズは高まり続けているが、その役割を担う介護福祉士資格に対する法整備や教育体制づくりは遅れをとっている。現在の介護福祉士は以前のように三大介護を行っていればよい職種ではなく、「ケア」に関する高度な専門的知識・技術の必要な専門職であることを認識し、ケアに内在する共感性のあり方やバーンアウト、虐待に至るプロセス等の研究を続け、適切かつ明確な対策を早急に立てる必要性のある領域であることが明らかになった。