- 著者
-
太田 成男
WOLF A. M.
MARTIN Wolf Alexander
WOLF Alexander Martin
- 出版者
- 日本医科大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究の目的は、老年病および生活習慣病におけるミトコンドリアからの活性酸素の放出機構を明らかにすることである。初年度で検討した方法に加え、酸化還元状態により鋭敏に蛍光強度が変化する新しく開発されたGFPタンパク(roGFP)を用いて細胞内の酸化還元状態を測定した。ミトコンドリア移行シグナルを有するroGFPによって生細胞のミトコンドリア内酸化還元状態をリアルタイムに検出することができた。この方法を用いて、生理的低濃度のアスタキサンチン(抗酸化剤でカロテノイドの一種)がミトコンドリア内を正常な還元状態に向かわせることを明らかにした。アスタキサンチンは、培養細胞に過酸化水素を添加したときの酸化ストレスとそれに伴う細胞死を抑制した。この時、ミトコンドリア膜電位の低下が抑制され、細胞の呼吸活性も維持されていた。これらの結果は昨年度第7回日本ミトコンドリア学会で発表し、現在、論文を投稿中である。さらにこのroGFPを用いて本研究の課題である活性酸素放出量(スーパーオキシド放出量)のミトコンドリア膜電位依存性について検討した。微量の脱共役剤(mild uncoupling)を使って膜電位を僅かに下げることで酸化ストレスが減少し、ミトコンドリア内が還元状態に向かう。しかし、膜電位の下げ幅が大きすぎるとATP合成ができなくなり、細胞がエネルギー危機に陥ることによってNADHが低下し、還元状態を維持できなくなることも分かった。これらの結果は7月のEBEC2008会議(アイルランド)で発表予定である。