著者
野村 大成 KRUPNOVA Eve ELISSEEVA Kl 本行 忠志 中島 裕夫 杉山 治夫 ELISSEEVA Klavdiya G. EVELINA V.Kr KLAVDIYA G.E MATSKO Vladi 藤堂 剛
出版者
大阪大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

1. 汚染地域での土壌・生態系での放射性物質の蓄積とその核種: 汚染地域(ゴメリー、コイニキ、ブラギン)と対照地域(ミンスク)の土壌、植物、野生動物等での放射性物質の測定と核種の同定を行った。殆ど全てが^<137>Csである。チェルノブイリ核施設崩壊後、土壌、水中より放射性降下物は減少していっているのに対し、10年たった現在でも、草木、食用植物(イチゴ、キノコ等)、水棲動物(鯉、カエルなど)など野生動植物への強度の濃縮を認めた。バッタ、トンボ、モグラ、マウスへとより高度の放射性物質の生物学的濃縮がみられた。2. 微量長期汚染の生態系への継世代的影響: 野生のショウジョウバエ、カエル、ハタネズミでの染色体異常の検出を行ったところ、カエル等に事故後10年たった今も、直後とほぼ同じぐらい高頻度に染色体異常が検出された。これは、継世代的影響と考えるよりも、野生動物に高濃度の放射能が残存(濃縮)しているためと考えた方がよい。3. 生物学的影響の実験研究: 粉末化した野イチゴ、キノコなどの食物を飼料に混ぜてショウジョウバエ幼虫を飼育し、ショウジョウバエ翅毛突然変異検出を行った。赤イチゴで、有意に体細胞突然変異が検出された。4. ヒトでの遺伝子変異の調査: 放射能被曝者(放射性物質除去作業者、汚染地域住民など)およびその子供(約200名)の血液より単核球を採取し、白血病早期発見のため、WT1遺伝子発現の定量と分子レベルでの遺伝子変異の検出を行った。被曝者56名中血液症状を有した者28名中16名に異常に高いWT1遺伝子の発現がみられ、白血病高リスク群であることを示唆した。血液症状を呈しない被爆者28名中7名にも軽度のWT1の発現がみられたが、ミンスク在住正常人にも同じ傾向がみられた。しかし日本人49名や、日本在住のコーケシアン26名には全くWT1の異常値がみられず、今後の課題となった。