著者
MURAYAMA SHU-ITI OKAMURA HACHIRO
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.10-25, 1973-07-01

われわれは1972年4月1日より8日までの短期間,フィリピンのルソン島各地で採集を行い,確実な目撃種4種を含めて計129種五百数十頭の蝶類を得た.おもな採集地はSanto Thomas(2日,5日), Ashin(3日,4日,6日), Tagaytay(1日), Atimonan(8日), Baguio(7日)Manila近郊低地(8日)等である.4月は同地で一年中最も暑い時期にあたり,同月下旬よりは雨期に入る.アゲハチョウ科全体としては,ひとつの発生期の山をすぎた感があったが,ミスヂチョウ類やシジミチョウ類には好時期とみえ,短期間の割に成果を収めえた.岡村にとっては今回は第2回目のルソン島採集であった.129種のうち,新種と思われるもの2種,新亜種と思われるもの7種のほか,未記録種と覚しきもの若千あり,なお学名の決定に研究の余地あるものが少くない.また岡村はAshin, BaguioにおいてPapilio rumanzovia, P. hydaspes, P. ledebouriaの採卵を行い,阿江茂博士に托して飼育・羽化に成功をみたが,P. benguetana 1♀は同氏よりのお知らせによると,2個産卵したうち1卵のみ孵化し第5令に達したが惜しくも死亡したということであった.学名の前に*記を付したものは目撃種,また和名の後に*印を付したものは今回新しくつけられたものである.掲載の写真は従来図示されることの少なかった,あるいは全く図示されたことのない種,亜種または性を選んだ.
著者
MURAYAMA SHU-ITI
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.66-68, 1959-11-15

著行は本文で台湾産コモンタイマイ及び5種の蝶類異常型の記載を行った.これらの材料は土として陳維寿氏の提供にかかるものでここに謝意を表する.コモンタイマイについては原種とみられる手もとのインド・アッサム産(Fig.3)や南シナ産の標本とくらべると,前翅表面1b室の中央1a脈に接して存在するやや矩形の緑色紋が基部の側に向ってこれに近く存在する,より小形な緑色紋と相融合する傾向をもつことが注意される.融合しない個体では,細い黒線で2つの紋が境され,原種の様に全く離れることはない.この点がもっと多くの個体で確認されると台湾の本種は地方型として分離出来るだろう.但し梅野氏(Zephyrus,5:247-248)が指摘された台湾産の本種は後翅の尾状突起が原種程長いものはないという点は,必ずしもすべての個体にあてはまらない.写真でみるように,♂には短い個体はあるが,♀は長く,♂でも♀と同様のものもあるから,これは固定した特徴となし難い.次にシロオビアゲハについては私はさきにNew Ent.Vol.7,No.1(1958)で応♂2異常型を記載したが,今回は2♀♀1♂を記載する。元来♂♀共に多型の種でこれらにすべて命名の必要があるとは思わないが,顕著なものにはある方が便利だろう。♀-ab.scintillansのTypeでない方の個体は一応同系列の異常型としたが,色彩は非常に趣きを異にし,中室端及び第2,3,4室基部の白紋は橙黄色をおび,これに続く赤紋及び第1室の長大な赤紋は紫白色をおび,後翅全体として赤紋はえび茶色を呈するが,裏面も同様赤紋に著しく紫白色鱗を交える.