- 著者
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矢野 円郁
Madoka YANO
- 雑誌
- 神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.1, pp.73-84, 2019-06-20
現代の日本では理系分野における女性の割合を増やすことが目標とされている。女性の理系科目に対する関心や学習意欲の低下には、「理系は男性、文系は女性」といったジェンダー・ステレオタイプを背景とした教師や親の態度が影響していると考えられている。(森永, 2017)。本研究では、小学校教諭がもつジェンダー観と教科学習能力に対する性差の認識を調査し、その関連を検討した。また、同様の調査を一般人(事務職員)にも実施し、小学校教諭との比較を行った。その結果、小学校教諭は一般人よりも性別特性論に対する信念は有意に弱かったものの、いまだに強く信じている人も少なくないことがわかった。性別特性論の信念が強い教諭ほど、教科学習能力の性差を大きく認識しており、生徒の性別によって働きかけが異なるという関連がみられ、ジェンダー・ステレオタイプの強い教師が、それを再生産している可能性が示された。ステレオタイプの再生産を防止し、男女共同参画社会を実現するためには、特に教育者がステレオタイプ的な思考を抑制し、性別カテゴリーにあてはめて個人の能力を推測することなく、各個人が秘めている能力を引き出すことに努める必要がある。