著者
山下 海 矢野 円郁 Umi YAMASHITA Madoka YANO
雑誌
女性学評論 = Women's Studies Forum
巻号頁・発行日
vol.34, pp.63-75, 2020-03-20

現代の日本社会では、「化粧は女性の身だしなみ」といわれ、職場などで女性にのみ化粧が課されることがある。女性に対してのみ課される「身だしな み」や服装規定は、化粧だけに限らない。仕事場で、女性のみヒールの高い靴を履かされたり、眼鏡をかけることを禁止されたりすることもある。これらの規定は、健康被害を生み、職務に支障をきたしうるものであり、世界的に、このような女性に対する理不尽な服装規定を廃止する動きが広がっているが、日本ではいまだに、「仕方がないこと」として許容する人も少なくない。化粧については、日本人女性も楽しみで行う人もいるが、女性だからしなければならないという義務感にかられてのみ化粧を行う人も少なくない。逆に、男性が化粧することに対して否定的な人もいる。男女問わず化粧をしたい人がし、したくない人に強要しない社会にするためには、人々のジェンダーステレオタイプをなくしていかなければならない。本稿では、化粧行動の歴史や化粧に対する意識についての研究を紹介しつつ、ジェンダーステレオタイプにとらわれない寛容な社会を築くために考えるべきことを議論する。
著者
矢野 円郁 藤岡 茉央 仁科 健
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.201-206, 2023-10-15 (Released:2023-11-03)
参考文献数
17

日本では,接客業の女性従業員は化粧を義務づけられることが多い.本研究では,飲食店の女性店員が化粧をしていない場合,客が不快に思うのかどうかを実験的に検証した.実験参加者に女性店員が接客をしている動画を見せ,その印象を評価させた.真の研究目的を悟られにくくするため,表情条件(笑顔/無表情)も追加し,複数の店員に対する評価を求めた.実験の結果,参加者の性別によらず,笑顔が印象を良くする効果は明確に示されたが,化粧の効果はほとんどみられなかった.また,化粧の実験操作に気づいた人(13名)においても,気づかなかった人(29名)と同様に,印象評価に化粧の効果はみられなかった.本研究結果が今後,女性に対する化粧義務の是非を議論するための材料の一つになると考える.
著者
矢野 円郁 Madoka YANO
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.73-84, 2019-06-20

現代の日本では理系分野における女性の割合を増やすことが目標とされている。女性の理系科目に対する関心や学習意欲の低下には、「理系は男性、文系は女性」といったジェンダー・ステレオタイプを背景とした教師や親の態度が影響していると考えられている。(森永, 2017)。本研究では、小学校教諭がもつジェンダー観と教科学習能力に対する性差の認識を調査し、その関連を検討した。また、同様の調査を一般人(事務職員)にも実施し、小学校教諭との比較を行った。その結果、小学校教諭は一般人よりも性別特性論に対する信念は有意に弱かったものの、いまだに強く信じている人も少なくないことがわかった。性別特性論の信念が強い教諭ほど、教科学習能力の性差を大きく認識しており、生徒の性別によって働きかけが異なるという関連がみられ、ジェンダー・ステレオタイプの強い教師が、それを再生産している可能性が示された。ステレオタイプの再生産を防止し、男女共同参画社会を実現するためには、特に教育者がステレオタイプ的な思考を抑制し、性別カテゴリーにあてはめて個人の能力を推測することなく、各個人が秘めている能力を引き出すことに努める必要がある。