著者
齋藤 晃 Rosas Lauro Claudia Mumford Jeremy Ravi ウィンキー スティーヴン・A スロアガ・ラダ マリナ スポールディング カレン Akira Saito Claudia Rosas Lauro Jeremy Ravi Mumford Steven A. Wernke Marina Zuloaga Rada Karen Spalding
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.123-167, 2014

集住化とは広範囲に分散する小規模な集落を計画的に造られた大きな町に統合する政策であり,スペイン統治下のアメリカ全土で実施された。そのおもな目的は先住民のキリスト教化を促進し,租税の徴収と賦役労働者の徴発を容易にすることだが,それに加えて,人間は都市的環境でのみその本性を発揮する,という考え方が背景にあった。第5代ペルー副王フランシスコ・デ・トレドが1570年代にアンデスで実施した政策は,約140万の人びとを800以上の町に集住させる大規模なものであり,在来の居住形態,社会組織,権力関係,アイデンティティを大きく変えたといわれている。 本論文は,2013年10月24日にリマの教皇庁立ペルーカトリカ大学で開催された国際公開セミナーの成果であり,副王トレドの集住化について近年刊行された以下の3冊の研究書の学術的意義を論じている。従来の研究では,トレドの政策はアンデスの生活様式を全面的に否定し,それをヨーロッパのもので置き換える根本的改革とみなされてきた。しかし近年,歴史学,人類学,考古学の分野において従来の見解の見直しが進んでいる。植民地事業が内包する矛盾や両義性,支配/抵抗という二項対立に還元できない植民者と被植民者の錯綜した交渉,先住民による再解釈や選択的受容など,従来見落とされてきた側面の解明が進み,集住化のイメージが刷新されつつある。この動向は,コロニアル/ポスト・コロニアル研究全体の動向とも連動している。・ジェレミー・ラヴィ・マンフォード『垂直の帝国―植民地期アンデスにおける先住民の総集住化』デューク大学出版会,2012年。・スティーヴン・A・ウィンキー『交渉される居住地―インカとスペインの植民地統治下におけるアンデスの共同体と景観』フロリダ大学出版会,2013年。・マリナ・スロアガ・ラダ『交渉される征服―1532年から1610年までのペルーのワイラスにおけるワランガ,地方権力,帝国』ペルー問題研究所/フランス・アンデス研究所,2012年。