著者
安田 万里子 中川 一美 中川 高志 鈴木 絢子 髙橋 麻美 梶川 歩美 西舘 美音子 野老 由美子 松澤 範子 齋藤 晃 森山 優
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
日健診誌 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.385-391, 2015
被引用文献数
3

日本では、禁煙治療として2006年からニコチン依存管理料が保険適用となり、2008年から禁煙補助薬であるバレニクリン(チャンピックス)が保険適用となった。喫煙率低下に向け、禁煙治療も大きく影響しており、定期的な禁煙治療の評価を行い、有効な禁煙治療を行っていく必要がある。今回我々は、2009年10月1日から2012年3月31日までに禁煙外来にて治療を行った130名(男性97名、女性33名)を対象に、禁煙成功群と禁煙失敗群に分類し、年齢、性別、ブリンクマン指数、TDS、初診時CO濃度値について両者の差異を比較した。有意差が認められたものはブリンクマン指数のみであり、禁煙成功群の方が高い値となった。<br> また、禁煙治療の5回受診を完了した者(5回通院者)は、禁煙成功群93名のうち69名であり、禁煙失敗群では、37名のうち5名であった。禁煙成功率と通院中断の有無に有意差が認められ、禁煙治療5回のプログラムを最後まで通院することが、禁煙の成功を有意に高めていた。<br> 禁煙成功群を対象にし、計5回の禁煙治療終了時点で4週間以上の禁煙に成功している者を完全成功群と定義し、計5回の禁煙治療を中止した者のうち、中断時期から4週間以上の禁煙に成功している者を中断成功群と定義した。禁煙成功群93名のうち、完全成功群は69名、中断成功群は24名であった。完全成功群と中断成功群の1年後の禁煙継続率は完全成功群が73.1%に対し、中断成功群は65.2%であったが、これらの有意差は認められなかった。しかし、2年後の禁煙継続率を見ると、完全成功群が51.1%、中断成功群は31.7%であり、長期的に見ると完全成功群の方が高い値であった。<br> これらのことから、禁煙治療プログラム5回全てに来院することが禁煙治療成功に繋がりやすく、また、長期的な禁煙継続にも影響していると考えられた。
著者
齋藤 晃介 三輪 誠 鶴岡 慶雅 近山 隆
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2013論文集
巻号頁・発行日
pp.134-137, 2013-11-01

ランダム性を持つゲームでは,プレイヤーが未来に得る情報が確率的に決まる.そのようなゲームの中から,ぷよぷよという落下型パズルゲームに着目する.ぷよぷよは,人間のプレイヤーは将来の完成型を考えて行動を選択しており,また完全にランダムな探索が無駄になりやすいために先読みが難しいゲームである.本論文では,確定完全情報パズルゲームで有効性を示されたNested Monte-Carlo Searchをぷよぷよに適用する手法を提案し,そのアルゴリズムの振る舞いを調査した.その結果,今回の設定では計算時間に見合うだけの有意な性能は示せなかった.
著者
齋藤 晃 島田 紀朋 新谷 稔 山根 建樹 藤瀬 清隆 小林 正之 戸田 剛太郎 鳥海 弥寿雄 柳沢 暁
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.605-611, 2005 (Released:2005-06-14)
参考文献数
12
被引用文献数
3

症例は30歳,女性.黄疸と右季肋部の腫瘤を自覚し当科受診.貧血および間接型優位の高ビリルビン血症と腹部USにて膵頭部に60 mm大の嚢胞性腫瘤を認め入院.腫瘤はCTにて隔壁が一部造影される低吸収を示したが,ERCPや血管造影の特異的所見や腫瘍マーカーの上昇はなく,確定診断に至らなかった.貧血,黄疸は遺伝性球状赤血球症によるものと診断されたが,腫瘤は幽門輪温存膵頭十二指腸切除にて膵神経鞘腫と診断された.
著者
齋藤 晃 Rosas Lauro Claudia Mumford Jeremy Ravi ウィンキー スティーヴン・A スロアガ・ラダ マリナ スポールディング カレン Akira Saito Claudia Rosas Lauro Jeremy Ravi Mumford Steven A. Wernke Marina Zuloaga Rada Karen Spalding
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.123-167, 2014

集住化とは広範囲に分散する小規模な集落を計画的に造られた大きな町に統合する政策であり,スペイン統治下のアメリカ全土で実施された。そのおもな目的は先住民のキリスト教化を促進し,租税の徴収と賦役労働者の徴発を容易にすることだが,それに加えて,人間は都市的環境でのみその本性を発揮する,という考え方が背景にあった。第5代ペルー副王フランシスコ・デ・トレドが1570年代にアンデスで実施した政策は,約140万の人びとを800以上の町に集住させる大規模なものであり,在来の居住形態,社会組織,権力関係,アイデンティティを大きく変えたといわれている。 本論文は,2013年10月24日にリマの教皇庁立ペルーカトリカ大学で開催された国際公開セミナーの成果であり,副王トレドの集住化について近年刊行された以下の3冊の研究書の学術的意義を論じている。従来の研究では,トレドの政策はアンデスの生活様式を全面的に否定し,それをヨーロッパのもので置き換える根本的改革とみなされてきた。しかし近年,歴史学,人類学,考古学の分野において従来の見解の見直しが進んでいる。植民地事業が内包する矛盾や両義性,支配/抵抗という二項対立に還元できない植民者と被植民者の錯綜した交渉,先住民による再解釈や選択的受容など,従来見落とされてきた側面の解明が進み,集住化のイメージが刷新されつつある。この動向は,コロニアル/ポスト・コロニアル研究全体の動向とも連動している。・ジェレミー・ラヴィ・マンフォード『垂直の帝国―植民地期アンデスにおける先住民の総集住化』デューク大学出版会,2012年。・スティーヴン・A・ウィンキー『交渉される居住地―インカとスペインの植民地統治下におけるアンデスの共同体と景観』フロリダ大学出版会,2013年。・マリナ・スロアガ・ラダ『交渉される征服―1532年から1610年までのペルーのワイラスにおけるワランガ,地方権力,帝国』ペルー問題研究所/フランス・アンデス研究所,2012年。
著者
齋藤 晃
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.223-256, 2003

スペインによる新大陸の植民地化事業は,メキシコとアンデスの軍事的制圧と統治機構の整備が一段落したのち,北米南西部,アマゾン川流域,パラグアイなどの辺境地域へ前線を進めていく。当時,それらの地域には大規模な政治組織は存在せず,先住民はいくつもの小規模な集団に分裂し,互いに戦争を繰り返していた。17 世紀以降,辺境地域の植民地化を委託された修道会は,先住民の戦争を福音伝道の障害とみなし,それに終止符を打とうとした。「平和の天使」を自称する宣教師は,戦争を終結し平和をもたらすことで,キリスト教的規範に則した社会を建設しようとした。本論は,宣教師の言明とは反対に,ミッション建設事業が戦争の否定のうえに成り立つのではなく,むしろ戦争を拡張の原動力として内部に取り込んでいたことを証明するものである。ミッションとは,戦争を通じて異教徒を包摂し,拡張することを存在目的とする捕食的拡張組織なのである。After the native kingdoms of Mexico and the Andes were conquered andthe colonial regime was firmly established, the Spanish colonization of Americaof Peace", the missionaries tried to end war, bring peace and construct a societythat accords perfectly with the Christian norms and ideals. This article,however, makes the opposite claim from that of the missionaries, namely thattheir enterprise turned out to be successful because it was based, not on thenegation of war, but on its affirmation. The article seeks to prove that war wasthe prime mover of the missions' expansive movement. The missions werein reality organizations of predatory expansion whose raison d'être was toinvade, incorporate and expand.proceeded to the frontier regions such as the North American Southwest, theAmazonia, Paraguay, etc. In these regions the Spaniards found no large-scalepolitical organizations. The native population was fragmented into a largenumber of small settlements that were constantly at war among themselves.From the 17th century, the religious orders assumed the task of colonizing thefrontiers. They saw the native state of warfare as a major obstacle to Christianizationand made every effort to put an end to it. As self-professed "Angles
著者
齋藤 晃 長谷川 裕也 内田 正哉
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.39-46, 2013-04-30 (Released:2019-09-10)
参考文献数
31

本稿では,らせん状の波面をもつ電子波の物理的基礎を概説し,最近われわれが行った電子らせん波の生成,伝播および干渉についての結果を紹介する.透過電子顕微鏡の照射レンズ系にFIB加工したフォーク型回折格子およびスパイラルゾーンプレートを導入し,試料上でのビーム径がナノメーターオーダーの電子らせん波を生成した.特にスパイラルゾーンプレートをもちいた実験では,±90ћという大きな軌道角運動量をもつ電子らせん波が生成できた.また,回折格子等を通過した電子がらせん波を形成するまでの伝播過程を観察し,その強度分布がフレネル伝播理論にもとづくシミュレーションときわめて良い一致を示すことを明らかにした.さらに2つの電子らせん波をもちいた干渉実験を行い,互いの軌道角運動量によらずそれらが干渉することを見出した.この結果から,軌道角運動量はスピンと異なり,位置や運動量と同時計測不可能な物理量であることが確認できた.