著者
Mayuko KANO Noriko SUDO Ayumi YANAGISAWA Yukiko AMITANI Yuko CABALLERO Makiko SEKIYAMA Mukamugema CHRISTINE Takuya MATSUOKA Hiroaki IMANISHI Takayo SASAKI Hirotaka MATSUDA
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
日本健康学会誌 (ISSN:24326712)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.150-162, 2017-09-30 (Released:2017-10-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1

妊娠可能年齢の女性の栄養状態を評価する方法として,2016年にFAOからMinimum Dietary Diversity for Women(MDD-W)が発表された.これは24時間以内に摂取した食品群の数を数えることにより,11ある微量栄養素の摂取状態を集団レベルで評価するものである.本研究ではMDD-Wをルワンダ農村地域で用いる際の妥当性を調べた.41名の対象者から集めた54日分の直接秤量記録データを用い,観測された摂取量が必要量を満たしている確率(probability of adequacy; PA)とMDD-Wスコアの関連をスピアマンの順位相関係数を用いて評価した.各栄養素のPAとそれらを平均した総合的な栄養指標(Mean PA; MPA)のうち,MDD-Wと有意な正の相関を示したものは少なく,相関係数も0.294から0.392と小さかったことより,本調査地域におけるMDD-Wの妥当性は確認できないと判断した.本地域では微量栄養素に富む食品の摂取量が少なく,食べていたとしてもそれらが全体的な栄養供給に貢献できていない例が多くみられた.食品群に含まれる栄養素量をその食品群の現地での平均摂取量当りに換算したところ,穀類の方が微量栄養素に富む食品群よりも多くの栄養素を供給していた.しかしMDD-Wでは摂取の有無のみを基準に評価を行うため,少量しか摂取されず栄養供給への寄与が低い食品群も,摂取量の多さにより寄与が高くなっている食品群も,同じ1ポイントとして扱われてしまう.また,各食品群の摂取量とPA,MPAとの相関係数を算出したところ,穀類の摂取量とMPAが有意な正の相関を示し,相関係数は0.634と相関の程度も強かった.一方で多様な食品を摂取しMDD-Wスコアが上がるほど穀類の摂取量は減るという逆相関がみられたことより,実際の栄養摂取状況とMDD-Wによる評価に不一致が生じていた.本地域でMDD-Wが正しく機能しなかったことは以上の理由によると考察するとともに,食品の多様性が限られている地域においては,現地の人々の栄養摂取に最も寄与している食品を見極め,その食品の人々の摂取量を把握することも重要であるという結論に達した.