著者
佐藤 克之 野田 伸一 Miguwe David K. Ziro Gideon N. Muhoho Ngethe D.
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.197-202, 1985-12-28

ビルハルツ住血吸虫症の流行地であるケニア国クワレ地区ムワチンガ村において,住民によく利用されている水系から,特に利用頻度の高い2ケ所(Site 6,Site 19)を選び,水中のセルカリア密度を,Prentice(1984)の方法を用いて測定した。さらにセルカリアの種を同定するために,4匹ずつの未感染ハムスターを調査地の水に暴露し,約3カ月後剖検して住血吸虫の感染の有無について調べた.Site 6では,401の水からわずかに1隻のセルカリアが回収されただけで,4匹のハムスターには,いずれも住血吸虫の感染は見られなかった.これに対して,Site 19では81の水から231隻のセルカリアが検出され,また4匹のハムスターからも,合計31個体の住血吸虫成虫(雄20,雌11)が回収された.これらのハムスターの肝臓には多数の住血吸虫卵が見い出され,形態学的特徴からビルハルツ住血吸虫のものと同定された.住血吸虫症流行地のいろいろな水系の水の危険度を測定する際のセルカリオメトリーの有用性について考察した.
著者
佐藤 克之 勝又 達哉 青木 克己 野田 伸一 Muhoho Ngethe D.
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.81-85, 1987-06-30

ビルハルツ住血吸虫症の流行地であるケニア国クワレ地区ムワチンガ村において,住民によく利用されている水系から,特に利用頻度の高い2ヶ所(Site 6, Site 19)を選び,水中セルカリア密度の日内変動をセルカリオメトリーにより測定した.測定は,メトリフォネートによる集団治療と水道水供給とを組み合わせたコントロール対策実施の前後2回にわたって行なった.(1983年11月及び1984年8月)Site 19では,コントロール対策実施前には,90リットルの水から合計567隻のセルカリアが検出され,水中のセルカリア密度は正午をピークとする日内変動を示した.コントロール対策実施後6ヶ月経た時点でも,90リットルの水から354隻のセルカリアが回収され,水中セルカリア密度は13時をピークとする日内変動を示した.このことから,Site 19では正午から午後1時にかけて感染の危険度が最も高く,早朝や夕方は低いことが考えられる.また,コントロール実施後でも、まだ感染の危険が相当残っていることが明らかとなった。一方, Site 6ではコントロール対策実施前に180リットルの水から2隻のセルカリアが検出されただけで,コントロール実施後には,セルカリアは回収されなかった。このようにもともとセルカリア密度の低い水系では,本実験で用いたセルカリオメトリーでコントロール対策が住血吸虫症の伝搬に及ぼす効果について評価することは困難と思われる.住血吸虫症コントロール対策が感染の危険度の減少に及ぼす効果を判定する際に,セルカリオメトリーを用いた場合の問題点について考察した.