著者
Muller Hans-Rudiger 真壁 宏幹 渡邊 福太郎
出版者
三田哲學會
雑誌
哲学 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.120, pp.145-170, 2008-03

本論文は,2006年3月,学術振興会外国人招へい研究者として来日され,3月8日,文学部教育学専攻と三田哲学会の共催のもと三田で行われたハンス-リューディガー・ミュラ_(Hans-Rudiger Muller)教授の講演原稿(Kunstliche Natur. Bildungsanthropologische Aspekte bei Schiller und Plessner)を訳出したものである.ミュラー教授は1952年ドイッに生まれ,ゲッティンゲン大学のクラウス・モレンハウアー教授の下でPh.D.(1990年)および教授資格(1996年)を取得,現在はオスナブリュック大学教育文化科学部の教授である.専門は,18,19世紀の教育思想,人間形成論(ヘルダー研究を中心に)や自伝研究に基づく教育史研究だが,最近では,とくに自伝を資料としながら家族における文化伝達の問題に取り組んでいる.しかし,その関心の中心は,あくまでも広い意味での美的実践と人間形成の関係に関する理論的考察であり,身体や感覚現象と自己の関係に関する文化分析である.本論文では,18世紀後半の美的人間形成論の鳴矢となったシラー『人間の美的教育について』と,20世紀のはじめに独特な感性論・身体論をもとに哲学的人間学を展開したプレスナーの人間形成論が比較されている.自然(身体)と理性のあいだに開いた近代的分裂を和解する可能性を「美的なもの」にみるシラーと,このような理想なきあと,たえず「脱中心化」を繰り返していくところに人間の本性と可能性をみるプレスナーのあいだに,近代における美的(感性的)人間形成論の連続性と非連続性をみようとしたのがこの論文である.最後に,ミュラー教授の代表的著作(編著,共著を含む)を挙げておこう.Klaus Mollenhauer (unter Mitarbeit von Cornelie Dietrich, Hans-Rudiger Muller und Michael Parmentier), Grund-fragen asthetischer Bildung. Theoretische und empirische Befunde zur asthetischen Erfahrung von Kindern, Munchen: Juventa 1996(クラウス・モレンハウアー『子どもは美をどのように経験するか』真壁/今井/野平訳,玉川大学出版部,2001年).Hans-Rudiger Muller, Asthesiologie der Bildung. Bildungstheoretische Ruckblicke auf die Anthropologie der Sinne im 18. Jahrhundert, Wurzburg: Konigshausen und Neumann 1998. Dietrich Cornelie/Hans-Rudiger Muller (Hrsg.), Bildung und Emanzipation. Klaus Mollenhauer weiterdenken, Weinheim und Munchen: Juventa, 2000. Hans-Rudiger Muller, Reflektierte Leiblichkeit. Zum Leibbezug bildender Kulturerfahrungen in Autobiographien um 1800, in: J. Bilstein/K. Bering/H. P. Thurn (Hrsg.), Kultur-Kompetenz. Aspekte der Theorie. Probleme der Praxis, Ober-hausen: Athena 2003, S. 95-113.1. シラーにおける技巧的自然 : 教育的作用を伴う超越論的理念としての美2. プレスナーにおける技巧的自然 : 人間存在の可能条件としての媒介された直接性と自然的技巧性3. 役者4. 結論 : 人間形成論的まとめ講演