著者
野坂 博南 NOSAKA Hiromi
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.129-149, 2011-03

本稿では、日本の生産性低迷に伴い、雇用形態別の労働市場がどのように変化し、日本の景気循環にどのような影響を与えたかを一般均衡サーチモデルの枠組みで分析した。カリブレーションの結果、長期的な生産性低下は相対的に解雇費用の低い非正規雇用の増加をもたらすものの、非正規雇用の労働市場の求人倍率は正規雇用に比べて悪化することを示した。また、長期的な生産性低下に伴い景気の変動幅が増幅されることを確認したが、特に非正規雇用の雇用や失業の変動幅が大きくなることが分かった。また、正規雇用と非正規雇用の補完度の上昇は全体の景気変動に大きな影響は与えないが、相対的に変動の大きい非正規雇用の変動を安定化させる効果があることを示した。