著者
Fukuoka Yoshitaka Narita Kenichi Matsuura Kenji
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.24-32, 1979-12
被引用文献数
1

本研究は,広島市の都市気候と大気汚染に関する気候学的研究であるが,第1報では主として前者について論じた。(1)まず,広島市の気候についての概観では,典型的な大陸東岸気候の中にあって,「夏は太平洋地域より涼しく,冬は日本海側より暖かい」という従来の説が妥当でないことを指摘し,かつ年平均流線図の上にも海風前線の存在が確認された。(2)次に,都市気温分布とそれに及ぼす太田川水系の影響に関しては,約4半世紀前にくらべ,built-up area と川面との気温差が増大していることが自動車による移動観測の結果わかった。(3)この川水の影響は,水温そのものの冷源(または熱源)効果よりも,水面からの蒸発に伴なう潜熱交換が気温緩和作用をもたらしているからと考えられる。(4)赤外放射温度針での表面温度測定による顕熱輸送は橋上で小さい。すなわち,川水面上で気温が和らかげられるのは,鉛直方向の熱収支だけでなく,川面での冷気の移流も想定される。