著者
西本 裕輝 Nishimoto Hiroki
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.19, pp.67-82, 2007-03

全国的に少人数学級化の動きが加速している。それは学級規模が小さければ小さいほど教育効果は高まるとする仮説に基づいていると言える。しかしながら、こうした仮説を支持する研究データはほとんどない。そうしたことから本研究では校長・教員を対象とした全国調査の結果から、学級規模と教育効果の関係について検討を行った。分析から、学級規模が小さくなるほど教育効果は高まるという結果が得られた。これは校長調査の結果も教員調査の結果も同様である。このことから、少なくとも校長や教員の意識の上では、少人数教育の効果はあると結論づけることができる。ただし、この結果からただちに「少人数学級化によって教育効果は高まる」「学級規模が小さいほど教育効果は高まる」と結論づけるわけにはいかない。今後行う児童生徒調査の結果も踏まえて、慎重に結論を出す必要がある。
著者
西本 裕輝 Nishimoto Hiroki
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.2, pp.61-76, 1998-09

本研究は、家庭環境と進路選択の関連を検討することを通して、学校の持つ再生産機能を浮き彫りにすることを目的とする。沖縄の高校生を対象とした計4回にわたる調査で得られたデータを分析した結果、主に次のことが明らかになった。(1)家庭環境と進路選択は大きく関連しており、格差が存在する。(2)その格差は学校により平準化されるどころか、より広げられている上の(1)は重回帰分析の結果、家庭環境から進路選択への直接効果が見出されたことによる。また(2)は、パス解析で家庭環境から進路選択への直接効果「家庭環境→進路選択」と、家庭環境から学校を媒体として進路選択に影響を与える間接効果「家庭環境→学校→進路選択」の双方が見出されたことによる。いずれにせよ、こうした結果が見出されるのは明らかに「学校による教育の平等化」の失敗であり、近年他県、あるいは欧米において指摘されてきている問題である。さらに沖縄の場合は経済的格差とあいまって、状況はより深刻と言える。