著者
大塚 望 Nozomi OTSUKA
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.24, pp.41-61, 2014-03-20

「する」は日本語の中で最もよく使用される単語の一つである。最もよく使われるということは,日本語を学習する者にとっては最もよく知っていなければならない単語であるということになる。初級レベルの日本語教科書(『みんなの日本語初級』『初級日本語げんき』)では「する」をどう提示し,何を教えているのか全文調査を行い,実際に「よく知る」レベルまでの学習ができるのかどうか考察した。その結果,基本的な例文は提示されていたが,その説明が無いまたは不十分なものがあった(表参照)。一方,類義語「やる」は説明が全くなく,数例掲載されているに過ぎなかった。以上の結果を日本語学習の更なる充実のための基礎資料としたい。
著者
大塚 望 Nozomi OTSUKA
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.23, pp.15-33, 2013-03-20

「とする」と「にする」は,共起する格助詞がトかニかという一文字違いでありながら,両者が示す意味や用法また統語構造は,大きく異なっている。これまで両者を比較する研究は見られなかったが,本稿ではこの二つの表現を一緒に考察することによって,その共通点,相違点がさらに明らかにされると考え実例を収集し比較した。共通点は,決定と同定を意味する用法を持つ点。相違点は「とする」が引用,仮定,将前,決定,同定を,「にする」が決定,変化,実現努力,仮想同定の意味を表す点と構文の違いであった。その意味分類の基準として主語の存在と変化前の想定という特徴を引き出した。結局は「する」の持つ形式性がこのような多様な意味用法を示すのである。