著者
横山 祐典 OBROCHTA Stephen Phillip OBROCHTA Stephen OBROCHTA Stefen Phillip
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

気候システムの理解に重要な熱帯域の環境変遷の復元のためには、太平洋とインド洋を結ぶ重要な海流であるインドネシア通過流の変動について理解することが重要である。世界で最も大気循環が活発で、その挙動がグローバルな気候変動に影響をおよぼす西赤道太平洋暖水プールの水温変動などをコントロールすると考えられている為である。本研究では近年でもっとも大きな環境変動である氷期-間氷期の移行期についてターゲットを置き、過去30万年間の変遷について、チモール海の堆積物コアを用いた研究を行った。特に底棲有孔虫の炭酸カルシウム殻の化学分析により水温および塩分変化をモニタリングをすることが目的であった。しかし実際に分析を行ってみると、酸素および炭素の同位体が、氷期間氷期の海水の同位体比を大きく超えて短時間で変動することが明らかになった。分析についての前処理方法の詳細な検討(酸の濃度変化、時間などのビデオを用いたモニタリング)、個々の試料のサイズ分析、電子顕微鏡観察などを通して解釈したところ、海域に存在が確認されている海底からの冷湧水にともなう初期続成作用によるものが考えられることが明らかになった。この研究は、古気候古海洋学を行う際の既存の前処理プロトコルについて一石を投じるもので、現在論文の準備中である。