著者
中村 淳路 横山 祐典 関根 康人 後藤 和久 小松 吾郎 P. Senthil Kumar 松崎 浩之 松井 孝典
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.174, 2013 (Released:2013-08-31)

地球上に存在するクレーターの形成年代や侵食過程について検討することは, 他の惑星表面のクレーターの形成過程を検討する上で重要である. 本研究は, インド・デカン高原上に位置する直径1.88kmの衝突クレーターであるロナクレーターについて, 宇宙線照射生成核種(10Be, 26Al)を用いた年代測定を行うことで, 形成年代と侵食過程の検討を行った. ロナクレーターは玄武岩上に形成され現在までよく保存されているクレーターとしては地球で唯一のクレーターであることから, 火星上のクレーターの比較対象として注目されている. しかし先行研究によるロナクレーターの年代推定は, 測定手法によって1.79 ka から570 kaまでと大きく異なっている. 本研究では10Be, 26Alを用いて新たにロナクレーターの表面照射年代を決定し, さらにイジェクタの露頭の14C年代測定を行うことで, 形成年代値の再検討を行なった.
著者
中村 淳路 Boes Evelien Brückner Helmut De Batist Marc 藤原 治 Garrett Edmund Heyvaert Vanessa Hubert-Ferrari Aurelia Lamair Laura 宮入 陽介 オブラクタ スティーブン 宍倉 正展 山本 真也 横山 祐典 The QuakeRecNankai team
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

Great earthquakes have repeatedly occurred along the Nankai Trough, the subduction zone that lies south of Japan’s heavily industrialized southern coastline. While historical records and geological evidence have revealed spatial distribution of paleo-earthquakes, the temporal variation of the rupture zone is still under debate, in part due to its segmented behavior. Here we explore the potential of the sediment records from Lake Hamana and Fuji Five Lakes as new coherent time series of great earthquakes within the framework of the QuakeRecNankai project.We obtained pilot gravity cores form Lake Hamana and the Fuji lakes Motosu, Sai, Kawaguchi, and Yamanaka in 2014. In order to image the lateral changes of the event deposits, we also conducted reflection-seismic survey. Based on these results, potential coring sites were determined and then 3–10 m long piston cores were recovered from several sites in each lake in 2015. The cores consist of 2 m long sections with 1 m overlaps between the sections allowing us to reconstruct continuous records of tsunamis and paleo-earthquakes. In this presentation we introduce the progress of QuakeRecNankai project and discuss the potential of the lakes as Late Pleistocene and Holocene archives of tsunamis and paleo-earthquakes.
著者
中田 正夫 前田 保夫 長岡 信治 横山 祐典 奥野 淳一 松本 英二 松島 義章 佐藤 裕司 松田 功 三瓶 良和
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.361-368, 1994-12-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
12
被引用文献数
13 14

西九州には縄文早期の鷹島遺跡や数多くの縄文前期から中期の水中遺跡が存在する. これらの遺跡が水没したおもな原因は, 最終氷期の大陸氷床の融解に伴うハイドロアイソスタシーに帰すことができる. 本論文では, このことを定量的に示した. この研究をさらに進めることは, 両極の氷床モデルや地殻とマントルのレオロジーを推定するのに非常に有益である.
著者
横山 祐典
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.265-286, 2019-06-01 (Released:2019-06-28)
参考文献数
130

過去の気候変化を含めた環境変動のメカニズムを解明するには,正確な年代決定が重要となる.本小論では年代測定,特に放射性炭素を高精度で多数測定することで明らかになってきた新しい第四紀学的な知見についてレビューする.サンプリング手法の改良や分析装置の発展に伴い,わずかな試料でもこれまでよりも短時間で高精度の分析が行えるようになってきたことから,過去の氷床変動を含む気候変動やジオハザードに関する知見の深化が進んできた.特に筆者らの研究グループで取り組んできているプロジェクトについていくつか紹介しながら,その重要性にスポットをあてたい.
著者
中田 正夫 奥野 淳一 横山 祐典 長岡 信治 高野 晋司 前田 保夫
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.315-323, 1998-10-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
31
被引用文献数
9 16

西九州には,縄文前期から縄文中期の水中遺跡が存在する.最終氷期の大陸氷床の融解に伴うハイドロアイソスタティックな地殻傾動は,これらの遺跡の沈水を定量的に説明することができる.これらの水中遺跡の分布は,地球の約250kmまでの深さの粘性構造に敏感に対応した事実を示している.この地域の海面変化の観測値と理論値を比較検討した結果,観測値を説明しうる粘性構造は,リソスフェアの厚さが30~50km,リソスフェア下200kmのアセノスフェアの平均的な粘性率が(8~20)×1019Pa sであることが判明した.つまり,アセノスフェアとその下の上部マントルとの粘性率のコントラストは有意ではなく,日本列島のような島弧域においても,発達した低い粘性率のアセノスフェアは存在しないことが示唆される.さらに,ハイドロアイソスタティックな地殻傾動に規定された後氷期の海水準変動は,空間・時間的に変化し,先史時代の居住地や生活様式を規定した可能性がある.
著者
関 有沙 横山 祐典 鈴木 淳 川久保 友太 菅 浩伸 宮入 陽介 岡井 貴司 松崎 浩之 浪崎 直子
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

完新世の短期的な気候変動のメカニズムを明らかにする上で、古気候復元データの不足は深刻な問題である。本研究では、完新世の寒冷化イベントの古気候データが不足している東シナ海に位置する沖縄県久米島の化石サンゴ骨格のSr/Ca比と放射性炭素年代の分析を行い、完新世中期の表層海水温の復元を行った。その結果、PME(Pulleniatina Minimum Event)と呼ばれる寒冷化イベントにおいて、夏と冬の水温低下幅が異なることが明らかになった。今後、本手法でPMEの際の表層海水温復元をより多くの年代で行うことによりPMEの古水温変動を時系列で復元し、寒冷化メカニズムの解明に寄与することが期待される。発表では、新たに採取した化石サンゴの放射性炭素年代測定の結果を示し、その年代分布から、今後の研究の展望についても紹介する。
著者
横山 祐典 阿瀬 貴博 村澤 晃 松崎 浩之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.693-700, 2005 (Released:2006-03-01)
参考文献数
53
被引用文献数
5 6

宇宙線との相互作用によって地球表層で岩石中に生成される核種(TCN)は, 加速器質量分析計(AMS)の発達によって, 地球表層プロセスの研究に急速に広く用いられるようになってきた. TCN研究では半減期の違う複数の核種を組み合わせることによって, 侵食速度, 埋没履歴などを求めることが可能である. 現在はTCNのうち, 10Beや26Alの測定がAMSにより活発に行われてきている. 現在のところTCNの絶対量の誤差は約10%と大きいが, それでもこれらの測定結果を使って, テクトニクスや気候変動についての新しい知見が得られるようになった. チベットにおいての研究例も増え始めており, 今後サンプリング地点を増やし測定を活発に行うことによって, インドのユーラシア衝突によって引き起こされているチベット地域のテクトニクスの詳細や気候変動を細かく明らかにすることができる.
著者
横山 祐典 NOT Christelle
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

今年度は、海水および炭酸塩のウラン系列年代を決定するために、高精度セクター型誘導プラズマ質量分析装置(SF-ICPMS)の分析を中心に行うとともに、有孔虫の飼育試料の局所分析をレーザーを使ったICPMS(LA-ICPMS)によって行った。ウラン系列年代測定法の確立は、機器の不安定な挙動や化学処理中の混入元素除去方法の確立などに時間がかかったため、高精度の分析は行うことができなかったが、誤差がまだ大きいものの、安定な分析は行えるに至った。また、飼育有孔虫の局所分析については、共同研究者から提供された、複数の異なるpH区で飼育した有孔虫試料について、微量金属の挙動をLA-ICPMSにより分析した。この研究は現在進行中の人為起源気候温暖化に伴う、大気二酸化炭素上昇と並行しておこるとされる海洋酸性化が、海洋生態系へどのような影響を与えるかについて、予測する上で重要なデータを与える研究である。海洋酸性化が、特に炭酸塩の殻を持つ生物に与える影響は、マイナスであるとするものの他に、pH区間によってはプラスに作用するという報告もあり見解の一致は見られていない。今回の研究では、特に過去の水温復元やpH復元に利用されている微量金属の挙動について明らかにした。その結果、全ての種において一致した挙動を示すのではなく、また元素によっても異なる挙動を示し、問題の複雑さが明らかになった。しかし、一般的に言えることは、共生藻をもつ種と持たない種によっての挙動の一致は認められ、今後の実験のデザインをする上で貴重な情報となった。この研究はこれまで報告が無いことなるpH環境下で飼育された有孔虫試料の局所分析を行った世界で初めての研究となり、結果を国際誌に投稿した。
著者
松本 淳 多田 隆治 茅根 創 春山 成子 小口 高 横山 祐典 阿部 彩子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,アジアモンスーン地域における過去の気候資料と,日本のさまざまな緯度帯から取得される地質試料(サンゴ年輪やボーリングコア等)の解析によって,過去数10年〜数千年の時間スケールでアジアモンスーン域の降水量変動および各流域洪水の洪水史をまとめ,モンスーンにともなう降水量変動と洪水の歴史の関係を長期的に復元し,地表環境の変化との関係を考察することを目的として研究を行なった。千年規模での変動として,日本海南部隠岐堆の海底コア三重県雲出川流域のボーリングコアを解析した。後氷期には約1700,4200,6200年前に揚子江流域で夏季モンスーン性降雨が強まり,雲出川流域において約6000年前には堆積速度が大変に速く,この時代には広域的に洪水が頻発していた可能性が判明した。また,琉球列島南端の石垣島で採集されたサンゴ年輪コアの酸素同位体比と蛍光強度の分析によって,過去の塩分変動を定量的に復元できることがわかった。20世紀後半の変動としては,近年洪水が頻発するバングラデシュにおいて,GISとリモートセンシングデータによってブラマプトラ川の河道変遷と洪水との関係を検討し,河道が約10年周期で河川の平衡状態への接近と乖離とを繰り返したことがわかった。また大洪水が雨季には稲作に大きな被害をもたらすものの,引き続く乾季には大幅な収量増加がみられることを見出した。流入河川上流域のネパールでの降水特性を検討し,ネパールで豪雨が頻発した年とバングラデシュにおける洪水年とが対応していないことがわかった。さらに日本においては,冬の終了や梅雨入り・梅雨明けが近年遅くなっていることを明らかにした。気候変動研究に多用されているNCEP/NCARの長期再解析データには,中国大陸上で観測記録と一致しない変動がみられることを見出し,アジアモンスーンの長期変動解析にこのデータを使用するのは不適切であることを示した。
著者
平林 頌子 横山 祐典
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.129-157, 2020-12-01 (Released:2020-12-12)
参考文献数
236
被引用文献数
1 2

完新世の気候は,最終氷期に比べて安定で穏やかであるが,完新世にも数百年から千年スケールでの気候変動は起きている.特に,8.2kaと4.2kaに全球スケールで起きた急激な気候変動は完新世の気候変動イベントとして注目され,完新世を区分するためのイベントとして慣例的に使用されてきた.2018年7月13日に国際地質科学連合(IUGS)国際層序委員会(ICS)により,新たに国際年代層序表が発表され,完新統/完新世を,下部完新統/前期完新世,中部完新統/中期完新世,上部完新統/後期完新世に細分することを正式に決定した.本小論では,それらの区分の定義に使用された上記の気候イベントについてレビューを行う.
著者
山根 雅子 横山 祐典 三浦 英樹 前杢 英明 岩崎 正吾 松崎 浩之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.329, 2008

近年開発された表面照射年代測定法は、二次宇宙線の作用により岩石の石英中に生成される宇宙線照射生成核種 (TCN) の濃度から、地表面が宇宙線に被爆した期間を直接求める手法である。この手法によって、これまで不確定性が高かった、南極氷床の最終退氷の時期が明らかになりつつある。発表者の研究グループは、東南極リュツォ・ホルム湾の露岩域から採取された岩石試料の石英に含まれる<SUP>10</SUP>Beと<SUP>26</SUP>Alの定量を行ない、この地域における氷床変動の研究を進めている。東南極のマック・ロバートソンランド、西南極のマリー・バードランド、南極半島においても、この手法を用いた最終退氷の時期に関する研究が行われている。TCNを用いたこれらの研究結果から、(1) 南極のどの地域も最終退氷の時期は完新世であること、(2) 東南極氷床は西南極氷床や南極半島氷床より気温の変化など、氷期の終焉によりもたらされた環境変化に対して、相対的に安定していたことが示唆された。
著者
横山 祐典
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.6, pp.883-899, 2002-12-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
62
被引用文献数
9 7

Global ice volume during the last glacial stage was obtained using geological observations from the sites located away from the former glaciated regions. The advantage using such records is that the area has been less influenced from the readjustments of the crust due to glacial isostasy. However the effect is still not negligible in those areas and hence it is required to correct sea-level records for both glacio-and hydro-isostatic effect to extract past global ice volume information. The record shows progressive growth of global ice volume since the end of the Last Interglacial. Rapid fluctuations of the volume were also observed during the last ice age corresponding to the Heinrich events observed in the North Atlantic ocean as well as Dansgaard-Oschgar events seen in the Greenland Ice cores. The Last Glacial Maximum was ranged between 30, 000 years ago to 19, 000 years ago and ended by the rapid disintegration of the ice volume that corresponding to decrease of the ca. 10 m of ice-volume equivalent sea-level. Gradual sea-level rise was seen during the late glacial stage, except the time known as melt-water pulse la in the Barbados coral, but other catastrophic rises were not found in the records. Main phase of deglaciation was ended until ca. 7000 years ago, yet slight decrease in ice volume equivalent to the 3 m global sea-level has been occurred since then. Sea-level change namely global ice volume fluctuations had been played as major role for human migration from Africa to the other parts of the world during the last ice age. Therefore studies on coastline changes will provide an useful information for the research on spatial and temporal histories of past human life styles.
著者
佐野 亘 藤田 和彦 平林 頌子 横山 祐典 宮入 陽介 ローレン トス リチャード アロンソン 菅 浩伸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

<p><b>はじめに</b></p><p> サンゴ礁の海浜沖には海草帯と呼ばれる生物・地形分帯がある.海草帯は海草類の群落であり,底質は砂礫質の堆積物で構成され,低潮位でも干出しない汀線付近から水深4mを超える場所にも形成されることがある.また海草帯は魚類や底生生物の生息・産卵の場,ウミガメやジュゴンなどの海草を摂食する貴重な生物種を支える場であるとともに,沿岸浅海域における炭素循環に大きな役割を担っていることも報告されている(Unsworth et al., 2019;Fourqurean et al., 2012;Nellemann et al., 2009).このようなサンゴ礁における海草帯の役割が注目される一方,サンゴ礁に現成のような海草帯が具体的にいつから形成されていたのかという時間的な検証が行われた研究例は少ない.</p><p></p><p>研究対象地域の一つである久米島のサンゴ礁地形は約8300年前から発達し始め,約5700年前に礁嶺が海面に到達.さらに礁嶺の海面到達後,外洋と分断されたラグーンが未固結堆積物で埋積されるということが明らかになっている(Kan et al., 1991).しかし、これらの先行研究は主に固結した礁石灰岩コアを用いて礁嶺の形成過程に焦点が当てられものであり,海草帯に代表される未固結堆積物で構成された沿岸域に関しては,その地形発達プロセスに関する科学的知見が少ない状況である.</p><p></p><p>そこで本研究では現成海草帯において採取された未固結堆積物コア試料を用いてその堆積物と年代を検討するとともに,現成海草帯の現地調査を行い,海草帯の地形発達過程とそれに伴う海草帯の形成時期を明らかにした.</p><p><b>現地調査と分析手法</b></p><p> 本研究では,琉球列島久米島の東部と沖縄島の備瀬崎の2地域において採取した海草帯の未固結堆積物コア試料(最大掘削深度4.2 m)を用いた.コア採取地点の底質は枝サンゴ礫を多く含む砂泥質の堆積物であり,リュウキュウアマモ(<i>Cymodocea serrulata</i>),リュウキュウスガモ(<i>Thalassia hemprichii</i>),またウミジグサ(<i>Halodule uninervis</i>)や,ウミヒルモ(<i>Halophila ovalis</i>)などの海草類が卓越した場所である.またコア試料採取地点および周辺地域における現地調査を行い,<i>Amphisorus hemprichii</i>,<i>Calcarina calcarinoides</i>などの大型底生有孔虫が現生の海草葉上に生息していることを確認した.コア試料は九州大学にてサブサンプリングを行い,東京大学大気海洋研究所にてサンゴ礫や有孔虫化石の放射性炭素年代測定を行った.さらに堆積物中の大型底生有孔虫の群集解析を行い,現生有孔虫の生息分布との比較から海草帯の堆積環境の復元を行った.</p><p><b>海草帯の堆積過程と形成年代</b></p><p> 久米島東部の海草帯における現地調査では,現生の海草葉上に優占的に生息する大型底生有孔虫(<i>Calcarina calcarinoides</i>)を発見した.<i>Calcarina calcarinoides</i>は先行研究においても海草葉上において優占的に生息することが明らかにされている(藤田他, 1999)ことから,この有孔虫化石を海草帯形成の指標として堆積物中に含まれる有孔虫の群集解析を行った結果,3.9 Ka BP以降(水深3m以浅)に海草帯形成を指示する結果が得られた.また沖縄島備瀬崎においては現地調査と堆積物試料の分析の結果,大型底生有孔虫である<i>Amphisorus hemprichii</i>(通称;ゼニ石)が古海草帯指標となることが示唆された.</p><p></p><p><b>謝辞:</b>本研究はH28〜32年度科研費 基盤研究(S) 16H06309「浅海底地形学を基にした沿岸域の先進的学際研究 −三次元海底地形で開くパラダイム−」(代表者:菅 浩伸)の成果の一部です.</p><p></p><p><b>参考文献</b></p><p></p><p>Fourqurean et al. (2012). <i>Nature Geoscience</i>, Vol. 5, pp.505-509</p><p></p><p>藤田和彦 他 (1999). 化石, No. 66, pp.16-33</p><p></p><p>Kan et al. (1991). <i>Geographical Review of Japan</i>, 64, 2, 114-131</p><p></p><p>Nellemann et al. (2009). Blue carbon: the role of healthy oceans in binding carbon, pp.35-44</p><p></p><p>Unsworth et al. (2018b). <i>Conservation Letters</i>, Vol. 12. pp.1-8</p>
著者
川幡 穂高 横山 祐典 黒田 潤一郎 井龍 康文 狩野 彰宏
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.35-45, 2018-01-15 (Released:2018-05-30)
参考文献数
34

炭酸塩を主たるテーマとしてIODP(統合国際深海掘削計画)では4航海が実施された.310次航海でのタヒチ島の結果によると,融氷パルス(Melt water pulse=MWP)-1Aの海水準の上昇は12-22mだったが,融氷パルス-1Bは観察されなかった.325次航海では,グレートバリアリーフで更新世のサンゴ礁掘削が行なわれた.最終氷期最盛期(LGM:20,000年前)には,水温は5℃以上降温していた.307次航海は,北西太平洋の深海サンゴの内部を初めて掘削した.サンゴマウンドの発達の開始は,現代の海洋大循環が大西洋で確立した更新世の最初期に地球的規模で寒冷化した環境変動と相関していた.320/321次航海では,過去5300万年間の時間レンジをカバーする赤道太平洋の深海底より一連の堆積物が採取された.炭酸塩の沈積流量に基づき新生代の赤道域の炭酸塩補償深度(CCD)変化が復元された.
著者
井上 麻夕里 中村 崇 田中 泰章 鈴木 淳 横山 祐典 川幡 穂高 酒井 一彦 Nikolaus Gussone
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.65, 2018

<p>本研究ではサンゴの骨格成長における褐虫藻の役割を明らかにするために、褐虫藻有りと無しのポリプ試料を作成し、温度、塩分、pCO2を調整した水槽で飼育した。飼育実験の後、ポリプ骨格について6種類の化学成分を分析した。その結果、海水のpH指標とされているU/Ca比についてのみ、褐虫藻有りと無しの間に有意な差が見られた。これは、褐虫藻有りのサンゴ体内のpHが上昇していることを示しており、これにより褐虫藻と共生関係にあるサンゴは骨格成長が早いことが分かった。</p>
著者
菅 浩伸 浦田 健作 長尾 正之 堀 信行 大橋 倫也 中島 洋典 後藤 和久 横山 祐典 鈴木 淳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

海底地形図や空中写真から沈水カルストの存在は指摘されていた。しかし,多くは陸上の露出部によって沈水カルストであると認識されており,海底の地形図は提示されていない。浅海域の地形を具体的に可視化することは難しく,地形の広がりについて議論されることは世界的にもなかった。本研究では石垣島名蔵湾中央部の1.85km&times;2.7kmの範囲でワイドバンドマルチビーム測深機R2 Sonic 2022を用いた三次元地形測量を行い,沈水カルスト地形を見いだした。本発表では測深によって作成した1mメッシュの詳細地形図を基に,潜水調査結果などをあわせて,大規模かつ多様な形態をもつ名蔵湾の沈水カルストについて報告する。<BR><br> 測深域では多数の閉じた等高線をもつ地形が可視化された。類似の地形はサンゴ礁地形など海面下で形成される地形になく,スケールもサンゴ礁の微地形より大きい。このため閉じた集水域より,地下水系によってつくられた地形,すなわちカルスト地形と判断できる。ここでは以下の5つのカルスト地形が認められ,これらがブロックごとに異なったカルスト発達過程を反映しているようである。 1) ドリーネカルスト,2) 複合ドリーネおよびメガドリーネ,3) コックピットカルスト,4) ポリゴナルカルスト,5) 河川カルストである。名蔵湾ではこれらのカルスト地形が現成の礁性堆積物によって覆われ,海底の被覆カルストを形成する。この過程で「カレン」のような規模の小さなカルスト地形は埋積されたとみられる。礁性堆積物の被覆により,水中の露頭で母岩を観察するには至っていない。名蔵湾でみられるような比高30mに達する凹凸の大きいカルスト地形は一般に透水性が低い石灰岩の弱線に沿って発達する。琉球石灰岩は透水性が高く,このようなカルスト地形を形成しにくい。名蔵湾の地形が頂部および旧谷底部に定高性をもつことから,母岩は陸棚で発達した第三紀宮良石灰岩ではないかと推定される。<BR><br> 本研究では名蔵湾の中央部で沈水カルスト地形が確認された。空中写真で視認できる沿岸域の地形とあわせて,名蔵湾のほぼ全域が沈水カルスト地形の可能性が高いといえる。名蔵湾は南北6km,東西5kmの広がりをもつ。この範囲は南大東島や平尾台とほぼ同じ大きさであり,日本最大の沈水カルスト地形の存在が示唆できる。
著者
宮原 ひろ子 門叶 冬樹 堀内 一穂 横山 祐典
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

マウンダー極小期(西暦1645-1715年の黒点消失期)において発生していた約28年に一度の宇宙線の1年スケールの異常増加の正確な年代を決定するため、山形大学高感度加速器質量分析センターに導入された加速器質量分析計を用いて、樹木年輪中の炭素14の測定精度を向上させるための基礎実験を行った。多重測定によって加速器質量分析計の安定性の検証と測定精度向上のためのメソッド開発を行い、従来の1/4以下の測定誤差を達成することに成功した。

1 0 0 0 OA 研究ニュース

著者
藤森 淳 酒井 広文 宮原 ひろ子 横山 祐典 小林 修 青木 秀夫
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.10-14, 2008-09

半導体スピントロニクス材料の複雑な磁性/気体分子の向きを揃える新手法を開発/樹齢2000年の屋久杉を使って太陽活動の歴史を探る/樹齢2000年の屋久杉を使って太陽活動の歴史を探る/水中での有機合成における革新的技術を開発/鉄系新高温超伝導体の理論を提唱
著者
横山 祐典 OBROCHTA Stephen Phillip OBROCHTA Stephen OBROCHTA Stefen Phillip
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

気候システムの理解に重要な熱帯域の環境変遷の復元のためには、太平洋とインド洋を結ぶ重要な海流であるインドネシア通過流の変動について理解することが重要である。世界で最も大気循環が活発で、その挙動がグローバルな気候変動に影響をおよぼす西赤道太平洋暖水プールの水温変動などをコントロールすると考えられている為である。本研究では近年でもっとも大きな環境変動である氷期-間氷期の移行期についてターゲットを置き、過去30万年間の変遷について、チモール海の堆積物コアを用いた研究を行った。特に底棲有孔虫の炭酸カルシウム殻の化学分析により水温および塩分変化をモニタリングをすることが目的であった。しかし実際に分析を行ってみると、酸素および炭素の同位体が、氷期間氷期の海水の同位体比を大きく超えて短時間で変動することが明らかになった。分析についての前処理方法の詳細な検討(酸の濃度変化、時間などのビデオを用いたモニタリング)、個々の試料のサイズ分析、電子顕微鏡観察などを通して解釈したところ、海域に存在が確認されている海底からの冷湧水にともなう初期続成作用によるものが考えられることが明らかになった。この研究は、古気候古海洋学を行う際の既存の前処理プロトコルについて一石を投じるもので、現在論文の準備中である。
著者
松崎 浩之 笹 公和 堀内 一穂 横山 祐典 柴田 康行 村松 康行 本山 秀明 川村 堅二 瀬川 高弘 宮原 ひろ子 戸崎 裕貴
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

南極ドームふじアイスコア中の過去72万年にわたる宇宙線生成核種記録を加速器質量分析で分析した。特徴的な宇宙線イベント(ラシャンプ、ブレーク、アイスランドベイズン)を詳細に解析したところ、宇宙線生成核種(特にベリリウム10)の記録が、グn一バルなイベントの記録となっていることが証明された。これにより、古環境研究における、より信頼性の高い年代指標を確立する道が拓けた。