著者
風間 洋一 PINANSKY S. B. PINANSKY Samuel Bernard PINANSKY Samuel Barnard
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

Pinanskyは、2年前にBerensteinと共に提唱した、素粒子の標準模型と非常に良く似た性質を示すMinimal Quiver Standard Modelの性質の研究を継続して行った。具体的には、このモデルのパラメーターに対する従来よりはるかに正確なバウンドの計算、および加速器実験における崩壊確率と計測確率の計算を遂行した。この計算により、近い将来にLHC実験から得られるデータとの比較の準備が整ったと言える。この研究成果は、Physical Review Dに掲載されることが確定している。この種のモデルにおける困難な点は、その背景にある超弦理論との関係が完全には明確になっていないことである。その鍵となるゲージ/弦対応については膨大な「証拠」が得られており、ある種の曲がった時空の境界にクイヴァーゲージ理論が現れることが知られているが、そのメカニズムをより明確にするために、トーリック幾何と呼ばれる代数幾何のクラスに関する研究も継続して行った。一方風間は、前年度に引き続き、ゲージ/弦対応の理解に不可欠であるにも拘わらず発展が遅れているラモン・ラモン場を含む曲がった時空中の超弦理論の研究を行った。この種の問題のプロトタイプである平面波背景場中の超弦理論をグリーン・シュワルツ形式で共形不変性を保ったまま量子化する方法を開発し、量子化されたヴィラソロ代数を構成することに成功した。さらに、系の持つ対称性代数の生成子の量子的な構成、および物理的状態に対応する頂点関数の構成の研究を進めたが、実はこうした研究は、平坦な時空の場合でさえ行われていないことが判明したため、まず平坦な時空の場合の構成を進めることとし、ほぼそれが完成しつつある状況である。