著者
三木 則尚 PRIHANDANA Gunawansetia PRIHANDANA GunawanSetia PRIHANDANA GUNAWANSETIA
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、ナノ多孔質ポリマーを用い、マイクロデバイスの界面をバイオメディカル用途に適するよう制御することであった。特に、ナノ多孔質ポリマーとしてパリレンならびにフッ素添加ダイアモンドライクカーボン(F-DLC)を、マイクロデバイスとして携帯型人工透析システムのためのマイクロフィルタリングデバイスおよび、脳波検出用フレキシブル針電極を研究対象とした。マイクロフィルタリングデバイスは、ナノ孔を有するポリエーテルサルフォン(PES)膜をフィルタとして用い、透析を行うが、膜表面に血液成分が固着する問題を有していた。これを、PES薄膜をナノ多孔質パリレンならびにF-DLCにより被覆することにより解決した。血液成分の固着による透析性能の低下を実験的に導出し、これをナノ多孔質ポリマーによる表面改質により防止できることを明らかにした。本結果を複数の国際論文誌ならびに国内外の学会において発表した。また、フレキシブル針電極においてはフレキシブルなポリマー上に銀薄膜を成膜するが、銀薄膜とポリマーとの密着性が悪い。そこで、銀薄膜上にナノ多孔質パリレンをコーティングすることで、導電性を有しつつ、刺入などの機械的な負荷に対して銀の剥離を防ぐことができた。また脳波検出に必要とされる10Hz程度の低周波数においてインピーダンス10kΩ以下を実現した。これらの結果を国際論文誌ならびに複数の国内外の学会において発表した。本研究の成果は、マイクロデバイスのバイオメデイカル応用において不可欠な生体適合性の付与手法として、極めて効果的と考えられるナノ多孔質ポリマーの成膜技術を確立、またその効果を実証したものであり、大きな意義を有するものである。