著者
Pred Allan 西部 均
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修
雑誌
空間・社会・地理思想 (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.9, pp.148-167, 2004

本稿は, 従来とは異なるタイプの地域地理学あるいは場所中心の地理学のために, 理論的基礎を提示するものである。その枠組みは, 時間地理学と登場しつつある構造化理論を集約したものに基づいている。それはまた, 景観として眼に映るさまざまな特徴の組み合わせとしてだけでなく, 絶えず生成する人間の生産物としても, 場所を概念化することで構築される。場所はひとつの過程とみなされ, その過程を介して社会的・文化的諸形態の再生産, おのおのの個人誌の形成, 自然の変形がやむことなく相互生成し, 同時に時間-空間の種別的な諸活動や権力諸関係が絶え間なく相互生成する。さらに, こうした諸現象が場所や地域の生成過程に織り込まれるときには, 普遍的法則にしたがうのではなく, 歴史的状況に応じてさまざまなやり方があると強調される。その枠組みからおのずと浮かび上がる三つの経験的論点について, 手短に検討される。