著者
Prashant KUMAR Rakesh GAIROLA 久保田 拓志 Chandra KISHTAWAL
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.741-763, 2021 (Released:2021-06-14)
参考文献数
69
被引用文献数
9

インド夏季モンスーン(ISM)期間中の正確な降雨量推定はインド亜大陸およびその周辺で最も重要な活動の一つである。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、Global Satellite Mapping of Precipitation(GSMaP)降雨プロダクトとして、全球客観解析データ等を補助データとして用いて計算した衛星プロダクトであるGSMaP_MVKや全球地上雨量計データで調整したGSMaP_Gaugeを提供している。本研究では、2016~2018年のISM期間で、インド南西部の州の1つであるカルナータカ州における高密度地上雨量計ネットワークを基準として、GSMaP降雨プロダクト(バージョン7)の日降雨量を検証する。さらに、本研究の主目的として、これらの高密度地上雨量計観測を、ハイブリッド同化法を用いてGSMaP降雨量に同化することで、最終的な降雨推定を改善する。ここで、ハイブリッド同化法は二次元変分(2D-Var)法とKalmanフィルタの組合せであり、2D-Var法を用いて地上雨量計観測を統合し、Kalmanフィルタを用いて2D-Var法の背景誤差を更新する。準備としての検証結果は、GSMaP_Gauge降雨量が北部内陸カルナータカ州(NIK)と南部内陸カルナータカ州(SIK)地域で十分な精度を持ち、西ガーツ山脈の地形性豪雨領域で大きな誤差を持つことを示唆する。これらの誤差はGSMaP_MVK降雨量の地形性豪雨領域でより大きかった。ランダムに選択した地上雨量計観測を用いたハイブリッド同化結果は、独立した地上雨量計観測と比較して、GSMaP_GaugeとGSMaP_MVK降雨量の精度を改善した。これらの日雨量における改善は地形性豪雨領域でより顕著である。GSMaP_MVK降雨プロダクトは、JAXAの運用処理において地上雨量計による調整が含まれていないので、より大きな改善を示した。また本研究は、Cressman法や最適内挿法と比較して、用いられた雨量計の数のインパクトに対するハイブリット同化法の優位性を示す。