著者
清水 啓二 池永 昌之 杉田 智子 嶽小原 恵 數野 智恵子 久保田 拓志 大越 猛 青木 佐知子 加村 玲奈 今村 拓也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.174-181, 2016 (Released:2016-06-16)
参考文献数
35

【目的】外来がん患者のオピオイド使用を実態調査し,乱用や依存につながる不適正使用の是正を通して,緩和ケアチームの課題を考察する.【方法】2014年の4カ月間に外来通院中のオピオイド使用がん患者について,緩和ケアチームがカルテ調査した.乱用や依存につながる不適正使用とは「がん疼痛または呼吸困難以外の目的でのオピオイド使用」とした.主治医と協議して不適正使用の判断と是正を図った.【結果】オピオイド使用67人中,乱用や依存につながる不適正使用は5人(7.4%)で,その内訳は,①がん疼痛で開始されたが,治療により責任病変が消失:3人(4.5%),②がん疼痛と考え開始されたが,精査で良性疾患と判明:2人(3%)であった.5人中4人でオピオイドを中止できた.【考察】外来でのオピオイド使用は,乱用や依存につながる不適正使用が見逃される危険がある.常に疼痛の原因を可能な限り明らかにする姿勢が重要であった.
著者
青梨 和正 田島 知子 久保田 拓志 岡本 幸三
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.1201-1230, 2021 (Released:2021-10-30)
参考文献数
35
被引用文献数
2

全天候マイクロ波イメージャ輝度温度を雲解像モデルの降水物理量へ同化するため、2スケール近傍法を使うアンサンブルに基づく変分同化法スキーム(EnVar)に、降水の非正規型確率分布関数(PDF)と、PDFの代用レジームを使った新しい位置ずれ補正法を導入した。 多くの事例について降水のアンサンブル予報摂動の既存の非正規PDFモデルへの適合性を評価した。これをもとに、降水強度のPDFとして混合対数正規分布を選び、EnVarに降水なし、降水ありの2つのPDFレジームを導入した。次に、EnVarで非降水、降水、強雨の代用レジームを導入し、そのPDFを対象地点の周囲のPDFの平均で近似する、降水の位置ずれ補正法を開発した。この平均の水平スケールは、アンサンブル予報摂動の相似性に基づいて推定した。上記手法が、マイクロ波イメージャ輝度温度の観測値と第一推定値の差のバイアスと正規性を向上させた。 台風1518について全天候マイクロ波イメージャ輝度温度観測データを同化する実験を行なった。その結果、本研究のEnVarは、従来の、降水の単一の正規分布PDFレジームを使うEnVarに比べて、衛星全球降水マップ(GSMaP)に近い降水解析値を与えた。降水の混合対数正規分布の導入は、台風や前線付近の強雨域で解析降水量を強め、代用レジームの使用は、解析値の降水の位置ずれ誤差を大幅に減らした。本研究のEnVarは、雲解像モデルの12時間予報までの降水予報を改善し、1日以上の台風中心位置や中心気圧の予報を改善した。さらにEnVarの予報解析サイクルは、1時刻の輝度温度同化よりも、台風周辺の強雨の短期予報と台風に付随した降水帯の予報を改善した。
著者
Prashant KUMAR Rakesh GAIROLA 久保田 拓志 Chandra KISHTAWAL
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.741-763, 2021 (Released:2021-06-14)
参考文献数
69
被引用文献数
9

インド夏季モンスーン(ISM)期間中の正確な降雨量推定はインド亜大陸およびその周辺で最も重要な活動の一つである。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、Global Satellite Mapping of Precipitation(GSMaP)降雨プロダクトとして、全球客観解析データ等を補助データとして用いて計算した衛星プロダクトであるGSMaP_MVKや全球地上雨量計データで調整したGSMaP_Gaugeを提供している。本研究では、2016~2018年のISM期間で、インド南西部の州の1つであるカルナータカ州における高密度地上雨量計ネットワークを基準として、GSMaP降雨プロダクト(バージョン7)の日降雨量を検証する。さらに、本研究の主目的として、これらの高密度地上雨量計観測を、ハイブリッド同化法を用いてGSMaP降雨量に同化することで、最終的な降雨推定を改善する。ここで、ハイブリッド同化法は二次元変分(2D-Var)法とKalmanフィルタの組合せであり、2D-Var法を用いて地上雨量計観測を統合し、Kalmanフィルタを用いて2D-Var法の背景誤差を更新する。準備としての検証結果は、GSMaP_Gauge降雨量が北部内陸カルナータカ州(NIK)と南部内陸カルナータカ州(SIK)地域で十分な精度を持ち、西ガーツ山脈の地形性豪雨領域で大きな誤差を持つことを示唆する。これらの誤差はGSMaP_MVK降雨量の地形性豪雨領域でより大きかった。ランダムに選択した地上雨量計観測を用いたハイブリッド同化結果は、独立した地上雨量計観測と比較して、GSMaP_GaugeとGSMaP_MVK降雨量の精度を改善した。これらの日雨量における改善は地形性豪雨領域でより顕著である。GSMaP_MVK降雨プロダクトは、JAXAの運用処理において地上雨量計による調整が含まれていないので、より大きな改善を示した。また本研究は、Cressman法や最適内挿法と比較して、用いられた雨量計の数のインパクトに対するハイブリット同化法の優位性を示す。
著者
阿波加 純 Minda LE Stacy BRODZIK 久保田 拓志 正木 岳志 V. CHANDRASEKAR 井口 俊夫
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.1253-1270, 2021 (Released:2021-10-30)
参考文献数
31
被引用文献数
8

全球降水観測 (GPM) 計画主衛星搭載の二周波降水レーダ (DPR) は、2018年5月からKu帯とKa帯の双方でフルスキャン (FS) モードで運用されている。従来のアルゴリズムでは観測幅約125 kmの内側走査領域でのみ二周波処理していたが、FSモードにより、初めて観測幅約245 kmの全走査領域で二周波処理することが可能となった。本論文では、FSモードに対応するよう新たに開発したDPR レベル2のバージョンV06X実験アルゴリズムに含まれる降水タイプ分類 (CSF) モジュールについて述べる。CSFモジュールは、降水を層状性、対流性、その他の3つの種類に分類し、ブライトバンド (BB) 情報を提供する。 Ka帯Matched Scan (Ka-MS) モードとKa帯高感度 (Ka-HS) モードでレーダの感度が異なるため、1ヶ月間の統計では、内側走査領域と外側走査領域においてKa帯のみで一周波処理した各降水タイプの個数に大きな段差が見られた。しかし、二周波処理では、内側走査領域だけでなく外側走査領域でも降水タイプを適切に分類していることがわかった。BB数の統計では、二周波処理を行った場合、特に外側走査領域でBB検出率が大きく向上していることがわかった。 さらに、V06XではKu帯のCSFモジュールに関連する2つの問題、(a) スロープ法で再分類した層状性の降水において非常に大きな地表面降水強度が出現する場合があること、および、(b) BBピークを地表面エコーの上部であると稀に誤判定すること、を解決している。 V06Xでは、GPM DPRアルゴリズムのデータ構造が大幅に変更された。V06Xで導入された新しいデータ構造は、V07A以降にも採用される予定である。この意味で、本稿で概説するV06XのCSFモジュールは、将来の降水タイプ分類アルゴリズムの原型の役割を果たすことになる。
著者
広瀬 正史 重 尚一 久保田 拓志 古澤 文江 民田 晴也 増永 浩彦
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.1231-1252, 2021 (Released:2021-10-29)
参考文献数
58
被引用文献数
5

全球降水観測(GPM)計画主衛星搭載二周波降水レーダ(GPM DPR)による降水の統計は入射角に依存した系統的なバイアスによって過小評価となっている。5年間のGPM DPR Ku帯降水レーダ(KuPR)Version 06Aデータによる降水量は、衛星の直下付近における統計に比べて陸では7%、海では2%少ない。本研究では、直下付近の観測データを参照して、低高度降水強度鉛直分布(LPP)と浅い降水の見逃し(SPD)の影響を推定した。 はじめに、降水の構造的な特徴や環境変数で分類した直下付近のデータベースを用いてLPPを更新した。高標高域や中高緯度等、高度2km以下で下方増加傾向の降水プロファイルが卓越する場所では、LPP補正によって降水量が増加しており、全球平均降水量は5%増加した。続いて、降水頂2.5km以下の降水データの検出数に見られる入射角間の差異をもとに、SPDによる全降水量への寄与を推定した。SPDに関する影響はLPP補正の結果と同程度であった。本研究では、地表面クラッターの干渉しない最低高度と空間的に平均した浅い降水の割合に対するSPD補正のルックアップテーブルを作成し、3か月間の0.1度格子の統計にSPD補正を適用した。SPD補正の結果、浅い降水が卓越する亜熱帯の少雨域や高緯度の降水量が50%ほど増加した。これらの2つの補正により、陸の降水は8%、海の降水は11%増加することが分かった。北緯60度から南緯60度におけるKuPRの降水平均値を他のデータと比較すると、補正によって衛星・雨量計合成データとの差異は−17%から−9%へ、陸の雨量計のみのデータとの差異は−19%から−15%へと縮小した。
著者
瀬戸 心太 井口 俊夫 Robert MENEGHINI 阿波加 純 久保田 拓志 正木 岳志 高橋 暢宏
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.205-237, 2021 (Released:2021-04-19)
参考文献数
50
被引用文献数
51

全球降水観測(GPM)計画主衛星搭載二周波降水レーダ(DPR)の降水強度推定アルゴリズムを開発した。DPRは、Ku帯レーダ(KuPR; 13.6GHz)およびKa帯レーダ(KaPR; 35.5GHz)から構成される。KuPRアルゴリズムは、熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載の降雨レーダ(PR)のアルゴリズムと同様であるが、降水強度Rと質量重み付き平均粒径Dmの関係(R-Dm関係)を、減衰係数kと有効レーダ反射因子Zeの関係(k-Ze関係)の代わりに使用している。R-Dm関係は、KaPRアルゴリズムおよび二周波アルゴリズムにも使用できる。一周波アルゴリズムおよび二周波アルゴリズムともに、R-Dm関係の修正係数εに暫定値を仮定した前進法によりプロファイルを推定し、その結果を評価して最適なεを選択する。二周波アルゴリズムの利点は、εの決定のために二周波表面参照法およびZfKa法(KaPRの減衰補正反射強度Zfを用いる手法)を用いること、およびKuPRまたはKaPRの観測を選択的に利用できることである。また本論文では、R-Dm関係と散乱テーブルの導出およびビーム内非一様性補正手法を詳細に説明している。さらに、アルゴリズムの出力結果を統計的に解析し、各アルゴリズムの特性を示している。
著者
菊池 麻紀 沖 理子 久保田 拓志 吉田 真由美 萩原 雄一朗 高橋 千賀子 大野 裕一 西澤 智明 中島 孝 鈴木 健太郎 佐藤 正樹 岡本 創 富田 英一
出版者
一般社団法人 日本リモートセンシング学会
雑誌
日本リモートセンシング学会誌 (ISSN:02897911)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.181-196, 2019-07-20 (Released:2020-01-20)
参考文献数
66

The Earth, Clouds, Aerosols and Radiation Explorer (EarthCARE) mission is a European-Japanese joint satellite mission that aims to provide the global observations necessary to advance our understanding of clouds and aerosols and their radiative effect on the Earth’s climate system. Toward this goal, the EarthCARE satellite loads two active instruments, Cloud Profiling Radar (CPR) and Atmospheric Lidar (ATLID), offering vertical profiles of clouds and aerosols, together with light drizzles, whose properties are extended horizontally using complementary measurement by Multispectral Imager (MSI). The properties thus obtained are then used to estimate outgoing shortwave and longwave radiation at the top of the atmosphere, which is evaluated against measurements taken by the fourth sensor, Broadband Radiometer (BBR). Such a “closure assessment” is used to give feedback to the microphysical property profiles and optimize them, if necessary, to offer consistent three-dimensional datasets of cloud-aerosol-precipitation-radiation fields. EarthCARE’s integrative global observation of clouds, aerosols and radiation with the new measurement capabilities, particularly with Doppler velocity, is expected to not only extend the A-Train measurement toward a longer-term climate record, but also to advance our perspective on the fundamental role that global clouds have within the climate system in the context of their relationships to dynamical processes and their interactions with aerosols and radiation. This review paper provides an overview of the mission, the satellite and its payloads, with a particular focus on the algorithm and products developed in Japan, and areas of scientific study expected to progress.
著者
瀬戸 心太 下妻 達也 久保田 拓志 井口 俊夫
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2014

二周波降水レーダ(DPR)を搭載した全球降水観測計画(GPM)主衛星は、2014年2月28日にH2Aロケットにより打ち上げられ、3月よりDPRの運用が開始された。DPRは、TRMM(熱帯降雨観測衛星)搭載のPR(降雨レーダ;周波数13.8GHz)の後継と位置づけられるKuPR(周波数13.6GHz)と、弱い雨や固体降水の観測に適した設計のKaPR(周波数35.5GHz)から構成されている。図-1に示すように、一部のピクセル(紫色)では、KuPRとKaPRによる二周波同時観測が可能であり、降水推定精度が高くなると期待されている。DPRに適用する降水推定アルゴリズムは、日米共同チームで数年前から開発が進められてきた。打ち上げまでは、PRから作成した模擬観測データを用いて、アルゴリズムの検証と改良を行った。運用開始以降、実際の観測データにより、プロダクトの検証とアルゴリズムの調整を行っている。標準プロダクトは、打ち上げ半年後の9月頃から一般公開される予定である。本発表では、レベル2プロダクトの概要と初期評価結果を紹介する。