- 著者
-
Haruka SHOZAKI-ITO
Mayumi OHNISHI
Tomoko SHIBAYAMA
Yumi MATSUYAMA
Rieko NAKAO
Kanako MORIFUJI
- 出版者
- The Japanese Society of Health and Human Ecology
- 雑誌
- 日本健康学会誌 (ISSN:24326712)
- 巻号頁・発行日
- vol.86, no.3, pp.111-120, 2020-05-31 (Released:2020-06-25)
- 参考文献数
- 27
- 被引用文献数
-
2
親密なパートナーからの暴力は,社会的,経済的,宗教的あるいは文化的背景に関わらず,公衆衛生上の健康課題となっている.日本においても,他の諸国と比較して低い状況とはいえ,親密なパートナーからの暴力が発生している.本研究では,大学1年生に対して,交際相手からのデートDV被害を受けた経験とその後の援助希求行動について,25の被害経験シナリオを含む無記名自記式質問票を用いて横断研究を行った.371人から回答を得た.男子148人(60.2%)および女子81人(64.8%)が,交際経験があると回答した(χ2=0.754, df=1, p=0.385).交際経験がある学生中,男子69人(46.6%)および女子49人(60.5%)が,何らかのデートDV被害を受けており,女子の方が統計的有意にデートDV被害を経験していた(χ2=4.033, df=1, p=0.045).最も回答が多かった被害経験は,「交際相手から『ブス/ブサイク』や『バカ』などと言われたことがある」であり,男子24人(16.2%)および女子26人(31.2%)であった.デートDV被害後,援助希求行動について回答した115人中,19人(16.5%)が相談していたが,相談先としては,19人全員が「友人」,4人が「母親」と回答した.専門職・機関に相談した者はいなかった.自分の意志に反したキスあるいはセックスといった性行為の経験があると回答した11人のうち,誰かに相談した者は4人,またその後交際を解消した者は4人であった.デートDVの予防や早期に適切な相手・機関への援助希求行動を促進するための介入プログラムを講じる際には,性別や文化的要素について考慮する必要性が示唆された.