著者
南澤 究 SANCHEZ GOMEZ Cristina SANCHEZGOMEZ Cristina
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

N2Oは強力な温室効果ガスであると共に、オゾン層破壊の原因物質でもある。植物根圏はN2O発生源の一つであり、私たちのグループはDNA校正機能を低下させたダイズ根粒菌Bradyrhizobium japonicumから、突然変異によりN2O還元酵素(N2OR)活性の上昇したNos強化株を作出し、N2O削減効果を実証してきた。しかし、Nos強化株におけるN2OR活性上昇の原因は不明であったため、本研究ではその原因解明を行ってきた。昨年度まで、(1)bll4572(nasS)遺伝子の変異がNos強化株におけるN2OR活性上昇の原因であること、(2)本遺伝子はB. japonicumの脱窒系においてnosZだけでなくnapAの転写制御に関与している新規転写制御因子であること、(3)NasTタンパク質による根粒菌脱窒の遺伝子発現促進をnasS産物が負に制御することが明らかとなった。本年度は、まずnasST介在nosZ遺伝子発現誘導の硝酸濃度プロファイル解析を行った。種々の濃度の硝酸および亜硝酸添加条件下のnosZおよびnapEの遺伝子発現の比較を行ったところ、細胞レベルのNasSTシステムの硝酸感受の臨界濃度は、50uM付近であり、ダイズ根圏における硝酸濃度より高いことが分かった。したがって、植物根圏において、NasS変異によりN2O還元酵素活性を上昇させられる科学的根拠が明らかとなった。また、次世代シーケンサーを用いたnasST変異体の網羅的な遺伝子発現解析の準備を行った。具体的には、野生株およびnasS変異株を好気条件で培養した細胞からRNAを抽出後、cDNAを作成し、次世代シーケンサーのRNA-seqによる発現解析系を確立した。