著者
南澤 究
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.4-11, 2022-04-30 (Released:2022-04-30)

持続的な食料生産を支える農業を目指して,窒素循環を担う土壌微生物の研究が求められている。筆者が行ってきた, (i)ダイズ根圏からのN2O の発生機構とその削減,(ii)水稲根のメタン酸化窒素固定,(iii)根粒菌の共生ゲノム研究を紹介し,人為的な温室効果ガス削減も含む地球環境に配慮した農業システムの基礎となる知見や方向性について,植物 共生細菌のゲノム研究の視点から議論を行った。
著者
南澤 究
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.121-127, 2000
参考文献数
21
被引用文献数
3

土壌細菌は地球レベルの物質循環や植物生育の上で大変重要な役割を果たしており,地球生態系の恒常性の維持に貢献している。本稿では,土着ダイズ根粒菌のDNAフィンガープリントを用いて,遺伝的多様性・風土性・ゲノムがシャッフルされたHRS株の遺伝生態研究について紹介を行った。土着ダイズ根粒菌も含めた土壌中の細菌の生活について細菌遺伝学やゲノム研究の最近の知見を踏まえて,(1)ゲノムの複製系と転写系の衝突,(2)オペロンの乱雑度と挿入配列,(3)非増殖条件による変異の誘発などについて考察を行った。今後,土壌微生物の分野でもゲノム研究,遺伝学分野,環境科学分野と連携し,総合性をもった研究が必要ではないだろうか。
著者
南澤 究 SANCHEZ GOMEZ Cristina SANCHEZGOMEZ Cristina
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

N2Oは強力な温室効果ガスであると共に、オゾン層破壊の原因物質でもある。植物根圏はN2O発生源の一つであり、私たちのグループはDNA校正機能を低下させたダイズ根粒菌Bradyrhizobium japonicumから、突然変異によりN2O還元酵素(N2OR)活性の上昇したNos強化株を作出し、N2O削減効果を実証してきた。しかし、Nos強化株におけるN2OR活性上昇の原因は不明であったため、本研究ではその原因解明を行ってきた。昨年度まで、(1)bll4572(nasS)遺伝子の変異がNos強化株におけるN2OR活性上昇の原因であること、(2)本遺伝子はB. japonicumの脱窒系においてnosZだけでなくnapAの転写制御に関与している新規転写制御因子であること、(3)NasTタンパク質による根粒菌脱窒の遺伝子発現促進をnasS産物が負に制御することが明らかとなった。本年度は、まずnasST介在nosZ遺伝子発現誘導の硝酸濃度プロファイル解析を行った。種々の濃度の硝酸および亜硝酸添加条件下のnosZおよびnapEの遺伝子発現の比較を行ったところ、細胞レベルのNasSTシステムの硝酸感受の臨界濃度は、50uM付近であり、ダイズ根圏における硝酸濃度より高いことが分かった。したがって、植物根圏において、NasS変異によりN2O還元酵素活性を上昇させられる科学的根拠が明らかとなった。また、次世代シーケンサーを用いたnasST変異体の網羅的な遺伝子発現解析の準備を行った。具体的には、野生株およびnasS変異株を好気条件で培養した細胞からRNAを抽出後、cDNAを作成し、次世代シーケンサーのRNA-seqによる発現解析系を確立した。
著者
室岡 義勝 南澤 究 阿部 美紀子 久松 真 山田 隆 山下 光雄 NANTAKORN Boonkerd NEUNG Teaumroong NAZALAN Najimudin NGUEN Huuhiep HARUMASTINI Sukiman BAYANIM Espiritsu
出版者
広島工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本、タイ、マレーシア、インドネシア、フイリッピンおよびベトナムの科学者が、東南アジア各地域の植物と共生する窒素固定細菌・微細藻類および菌根菌を採取して、持続的バイオマス生産への効果を調査・研究した。共生微生物をバイオコンポストとして用いた結果、イネやマメ科作物などの食糧生産、デンプンやセルロース資源バイオマスの生育促進およびヤシ油・ジャトロファ油の増産を促した。共生微生物によって、エコシステムが構築され化学肥料の削減をもたらした。ここに、持続的食料およびバイオマス資源生産に共生微生物を積極的に利用することを提言する。