著者
桑野 園子 難波 精一郎 FLORENTINE M FASTL Hugo SCHICK Augus
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

公共空間において,突発的な危険を知らせる警告信号音が具備すべき条件として,(1)種々の騒音下において検知されやすいこと,(2)高齢者など広い年齢層を対象にしても検知されやすいこと,(3)音が検知された場合,それが何らかの警報であることが容易に認知されること,(4)この音の認知は文化の相違を超えた普遍性があること,すなわち警報としての機能がある特定の文化圏に限定されないこと,などが挙げられる。これらの諸条件を考え,SD法による危機感を与える音の検討,連続判断実験による種々の背景条件下で特に判断時点を定めない場合の検知実験,さらにSD法に関してはドイツ(オルデンブルグとミュンヘン),アメリカ(ボストン)で実験を行った。また,日本における実験には海外からの研究者の参加を得て相互比較の信頼性を高めるべく努めた。これらの実験の結果,早い速度で周波数変化を反復する音が検知の面でも危機感の面でも警告信号音として適当であるとの結論が得られた。またこの結論は海外の実験でも確認された。この反復する周波数変化音は広い周波数範囲を含む音なので,高齢者のように高音部の聴力が低下している場合でも,低音部の成分が検知の手掛かりを与える。今後,国際会議などでもこの結果を紹介し,ISO(国際標準化機構)における警告信号音の標準化の資料としても貢献できるように努めたい。