著者
太田 博樹 SCHMIDT Ryan SCHMIDT Ryan William
出版者
北里大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

【研究の目的】本研究のテーマ「縄文人と弥生人の混血を検証」は埴原和郎が1991年に提唱した『日本人形成の二重構造モデル』の主要部分を占める。約1万2千年前、日本列島全体には狩猟採集民・縄文人が住んでいた、一方、2千数百年前に現れた弥生人は水田稲作民で、東アジア大陸からの移住者(=渡来民)と考えられている。そして弥生~古墳時代、在地系縄文人と渡来系弥生人の混血が進行したとされる。本研究で検証すべきは渡来系弥生人の遺伝的貢献がどの程度であったかである。埴原は遺跡数から推定される人口増加を説明するために、非常に多くの渡来民が日本列島へやってきたと考えた。しかし、水田農耕の技術力を背景に渡来民の人口増加率が急速であった可能性もある。渡来系弥生人の遺伝的貢献度を定量的に分析するには、古墳時代人の人骨のDNAを調べるのが最も有効だ。そこでライアン・シュミットは古人骨DNA分析に着手した。【研究実施計画】古い人骨からのDNA抽出は技術的困難が伴うため、まず最初に1つの細胞あたりの分子量が多いミトコンドリア・ゲノム(mtDNA)の分析に取り組んだ。茨城県ひたちなか市・十五郎穴横穴群遺跡から出土した人骨7検体(8~9世紀)および群馬県渋川市・金井東裏遺跡から出土した人骨2検体(6世紀初頭)を分析対象とした。これらを物理的に粉砕した上、DNAの抽出・精製をし、mtDNA D-loop 領域119bp断片を増幅するプライマーをもちいてPCRを行った。その結果、全ての試料で増幅に成功した。続いて、この増幅断片にオーバーラップする別のプライマーセットをもちいてさらなるPCR増幅を行った。その結果、D-loop領域のほぼ全体をカバーすることに成功した。これらのうち残存DNA量が十分なものについて次世代シークエンサーで分析を行うためのライブラリーを作成した。