著者
中島 淳 SHAFIQUZZAMAN MD
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

飲用地下水の砒素汚染は世界規模の環境問題であり、バングラデシュ、インド西ベンガル、中国、タイ、ベトナム等々で報告されており、バングラデシュだけでも4,000万人以上が汚染地下水を飲用しているといわれている。これまでの研究で、鉄酸化バクテリアと鉄を利用したハイブリッド型砒素除去フィルターを開発したが、今年度は、これまでの研究成果を発展させ、以下を明らかにした。(1)フィルターの適正な維持管理手法砒素除去装置をバングラデッシュの砒素に汚染された地域に設置し、その性能を1年以上調査した。雨季には使用を休止した家庭もみられたものの、1年後においても砒素除去性能が維持されていた。手によるフィルターの簡易洗浄だけで、1年間の運転は可能と考えられた。また、鉄網の使用期間は1年間程度であるといえる。(2)フィルターを用いた持続可能な水利用システムの構築現地のNGOおよびクルナ工科大学と議論をし、クルナ市郊外の農村住民を対象とした砒素除去フィルターの普及方法を検討した。その試みとして、現地NGOのトレーニングセンターを使用して、砒素除去フィルターの製作と使用および維持管理に関するワークショップを開催し、NGOのモビライザーを中心とした参加者が、フィルターを製作した。すべて現地の材料と施設で、砒素除去装置の製作が可能であった。また、砒素除去性能の信頼性を高めるために、妨害物質のシリカの影響についても検討したが、現地濃度は影響を与える濃度レベルにはなかった。