著者
坂井 祐円 Sakai Yuen
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-14, 2021-02-20

20 世紀後半の死生学研究の展開の中で,生まれ変わり現象についての科学的アプローチによる研究が進んだ.この研究には大きく二つの方向がある.一つは世界各地の前世記憶をもつ子どもの事例についての調査研究であり,もう一つは退行催眠を用いたトラウマ治療の中で,生まれる以前の過去生の記憶を語り出すという事例についての心理研究である.とりわけ後者の研究では,被験者が一つの人生から別の人生に移行する間にあるとする中間生(あの世)についての記憶や,魂の成長のために生まれ変わるという目的を語ったことを報告している.本稿では,まず前半でこうした生まれ変わり現象の科学的な研究の成果を紹介する.そして,これを踏まえた後半では,生まれ変わり現象についての授業を受けた大学生のレポートを取り上げ,そこに見られる意見や感想をもとに,生まれ変わりをどのように考えたらよいのかについて,死生観や伝統宗教との関連から考察する.