著者
河原 美彩子 Sauter Disa 田中 章浩
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

多感覚的な情動認知は文化の影響を受け、日本人はオランダ人に比べ音声感情を重視しやすい (Tanaka et al., 2010)。本研究では、このような文化差が5~12歳の子どもおよび大人においてどのように発達するのか検討した。実験では、表情と音声感情が一致または矛盾する動画を呈示し、それが喜びと怒りのどちらを表現しているか参加者に判断させた。その結果、音声感情を選択した割合(以下、声選択率)は、大人では特に喜び顔が怒り声とともに呈示された場合にオランダ人よりも日本人の方が高いことが示された。さらに、この組み合わせにおける声選択率は5~6歳の時点では低く、日蘭間に差がみられないが、それ以降日本人においてのみ増加がみられた。この結果は、日本人にとって表情と音声感情の組み合わせに意味があり、さらにその文化特有の感情の表出および解読規則は児童期において年齢とともに獲得されることを示唆している。