著者
渋谷 勝己 Shibuya Katsumi シブヤ カツミ
出版者
大阪大学文学部日本語学講座
雑誌
阪大日本語研究 (ISSN:09162135)
巻号頁・発行日
no.12, pp.33-47, 2000-03

本稿は、従来の、文法を対象とした方言地理学の問題点を整理し、検討を加えることによって、以下のことを指摘するものである。(a)これまでの方言(地理学的な)研究には、文法を対象とするとしながらも、形式面にたいする配慮しかなされていない場合が多い。(b)またこれまでは、方言研究者、共通語文法研究者のいずれもが方言文法体系の記述を避けてきた。(c)したがって方言文法研究者に課された作業には、次のようなものがあることになる。(c-1)各々の方言の文法記述を個別的に進めること(c-2)方言間比較対照を行うための分析枠を設定すること(c-3)その枠を構成する意味項目ごとに各地方言の形式を地図上にプロットし、重ね合わせ法によって方言の動態を見出すこと このうち(c-1)が、もっとも急がれる課題である。