著者
安冨 成良 ヤストミ シゲヨシ Shigeyoshi Yasutomi
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.125-143, 2003-10-01

日本人花嫁法(1947年)の制定において、日系社会、とりわけ日系二世が中心となって活動していた日系アメリカ人市民協会(JACL)の果たした役割は非常に大きい。特にJACLのロビイストのマイク・マサオカと彼に導かれたJACLの反差別委員会は法案の成立に向けて中心的役割を果たしたが、何故、これほどまでに精力的にこの問題に取り組んだのであろうか。またアメリカに渡ってきた日本人戦争花嫁を日系社会やJACLがどのように見ていたのであろうか。本稿ではこうしたことに焦点を当て、戦争花嫁のアメリカ入国前後の日系社会の状況について論考する。そして日本人花嫁法制定の背景を明らかにするために、1920年代以降のアメリカの差別的な移民法・国籍法の推移を概観すると共に、戦後のJACLの活動や、日系社会の状況についても新聞記事などをもとに検証する。
著者
安冨 成良 植木 武 ヤストミ シゲヨシ ウエキ タケシ Shigeyoshi Yasutomi Takeshi Ueki
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.75-97, 2005-04-30

本稿では、はじめに戦争花嫁のアメリカ社会への適応に関するこれまでの先行研究を吟味し、その分析枠組みを考察した。そして「エスニシティ(ethnicity)」を、場面、状況に応じて変化するプロセスとして考え、日本的価値観をもつ戦争花嫁の「エスニシティ」を基層にしっかり根をひろげたものとして捉えた。また移住先のアメリカの文化・社会・経済などといったものがどういう状況にあるのか、という外的要因である「コンテクスト(context)」を提示し、場面、場面での対応の「ストラテジー」について、われわれが実施した調査票調査やインタヴューの結果を通して分析した。我々の調査、研究を通し、戦争花嫁のアメリカ社会への適応を考える際に重要な要因となる戦争花嫁の価値観については、戦争花嫁の基底には「日本的価値観」があり、上層に文化変容を通して身につけた「欧米的価値観」があるとし、その中間層に場面や状況、テーマなどによって変化する第三層が存在する、という三重構造を、いくつかの事例を通し明らかにした。