著者
Suyehiro Shigeji
出版者
Japan Meteorological Agency
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.459-471, 1970
被引用文献数
2

1968年十勝沖地震の余震で浦河(北大地震観測所)の広帯域広ダイナミックレンジ地震計に記録されたものを調べたところ,P波S波について高周波の波が低周波の波に比べて遅れて到着するという一見分散のような現象が見られた.さらに前震や同地域における十勝沖地震以外のものを調べた結果,次の点が明らかとなった.<BR>(1)P,Sについて高周波の波が遅れる現象は比較的遠い余震に見られる(Fig.3).<BR>(2) この遅れの時間は震央距離が増すと共に大きくなる(Fig.4).<BR>(3) この現象を示す地震の深さは0から40km以上に及び,モホ面の下を含む.<BR>(4)ただし,この現象を起す地震群の中にありながら,深さ70kmの地震は高周波の遅れを示さなかった.<BR>(5) この疑似分散を示す地震の高周波部分は大きな減衰をも受けている.<BR>(6) この現象を示す地震は三陸沖の一部に限られる.東北地方の陸上,北海道内陸部,千島列島の地震は分散現象を示さないし,また高周波の減衰も僅かである(Fig.9).<BR>以上の観測事実から,東北地方の太平洋沖に異常地域があって,クラストとマントル最上部を占めている.この異常地域内部には分散子があって高周波に迂廻を起させるのであろう.またQタイプの吸収も正常地域より大きい.この地域が日本海溝の最北端にあたり,この附近の地震の発震機構が隣接の地域と異なっていることも興味深い.最近論ぜられているテクトニックスの問題と関連あるかもしれないが,そうとしても決して簡単な機構ではあり得ない.