著者
TANAKA Maki
出版者
北海道医療大学
雑誌
東日本歯学雑誌 (ISSN:09109722)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.71-85, 1997-06-30

以前,我々はヒト舌癌細胞において,高浸潤株は低浸潤株よりCu-ZnSOD活性が低く,さらにアンチセンスc-DNAを導入することによりCu-ZnSOD活性を抑制し,in vitroにおいて細胞の運動能が先進したことを報告した。しかしながら,この細胞内Cu-ZnSOD活性と腫瘍細胞の運動能との,逆相関関係は他の腫瘍細胞においても見られることなのか,また実際にin vitroでの転移能は細胞内Cu-ZnSODにより規定されるのかは報告されていなかった。今回,私はマウスMeth A細胞から樹立した低転移クローンML-01にCu-ZnSODのアンチセンスc-DNAを導入し5株のクローンを得た。そのうち最もSOD活性が低下したML-AS2,また活性の低下が最も少なかったML-AS5のSOD活性の異なる2つのクローンを用いて運動能と転移能を検討した。結果,運動能についてはベクターのみを導入したML-neoと比較してML-AS2は4倍, ML-AS5は2.2倍の先進が認められた。つぎに,ML-ASクローン群をSuperoxideにて処理したところ,運動能が促進したが, ML-neoでは変化を認めなかった。転移能はML-neoと比べるとML-AS2では4.5倍,ML-AS5では2.5倍の値を示した。これらの結果から細胞内Cu-ZnSOD活性と転移能は,逆相関関係で細胞内Cu-ZnSODは運動能を規定する因子であることが示唆された。