著者
矢部 辰男 TATSUO YABE 神奈川県衛生研究所 Kanagawa Prefectural Public Health Laboratories
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.35-41, 2000-05-31

家ネズミ類3種における以下のような特性の違いは,種特異的な食品被害をもたらす.1.ドブネズミは雑食性で,植物質のほかに獣肉・魚介類などの高タンパク質食品を好む.クマネズミ類は種実類(種子・穀類および果実類)やその二次製品を,ハツカネズミは種子・穀類やその二次製品を好み,高タンパク質食品をあまり選択しない.このような食性の違いは消化・代謝能力の違いに起因すると思われる.2.渇きに対する強さを比較すると,ドブネズミとクマネズミの間に大差はないが,ハツカネズミは渇きにきわめて強い.しかし,ドブネズミは,高タンパク質食品に含まれる窒素分の排出のために,多量の水分を要求する.その結果,ドブネズミが最も渇きに弱い.渇きをいやすために,ドブネズミやクマネズミが水気に富む植物質を積極的に食べることがある.ハツカネズミも授乳中には,多量に必要とする水を求めて水気に富んだ植物を食べることがある.3.ハツカネズミはしばしば小さな種子だけを選択的に食べることがあるが,これは体の小さいことを反映したものであろう.4.ドブネズミには貯食性があり,この習性は大量の食品を汚損・消失させる.