著者
Fumiko NAITO Setsuko TAKAHASHI Yukinori SATO Shun NOGUCHI Hiroshi NAITO Tadayoshi TANAKA
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
Journal of Home Economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.153-159, 1996-02-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
9
被引用文献数
2

真空調理法によるイカ肉の物性および食味特性を通常調理法と比較し, 真空調理については加熱温度や加熱時間の影響を物性, クッキングロスおよびスペースロス, 肉中のプロトン緩和曲線から検討し, 官能評価との関連性をみた.結果は次の通りである.(1) 真空調理時の加熱温度は40, 50, 60, 70および80℃について検討したところ, 温度の上昇に伴うイカ肉の硬さは40, 50, 60℃と上昇するに従い軟らかくなり, 60℃で最も軟らかい値を示した.さらに60℃を越すと加熱温度の上昇とともに硬くなることが認められた.クッキングロスは温度の上昇に伴い大となった.(2) イカ肉の真空調理の加熱時間の影響を20分間から50分間加熱について比較したところ, その差は認められなかった.(3) イカ肉中の水の動きの変化は60℃付近から起こり, 水分含量の減少や緩和時間丁2値の上昇は70℃加熱の肉に認められた.(4) 官能評価においては外観や食感に関する食味特性および嗜好について検討したが, 60℃および80℃加熱はともに好まれない傾向を示し, 70℃-30分間加熱により嗜好性の向上が認められた.(5) 以上の結果から, イカ肉の真空調理に適した加熱温度は約70℃であり, 加熱時間は20~30分間が適当と考えられた.(6) 真空調理法によりイカ飯を調製したところ, 煮込み調理に比べて官能評価の食感の項目でより好まれる傾向を示した.また調理操作の面では加熱中の攪拌が不必要であり, 少量の煮汁で加熱が可能であるなどの利点が認められた.