- 著者
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川瀬 隆千
Takayuki KAWASE
- 雑誌
- 宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.1, pp.39-57, 2003-03-20
雇用・能力開発機構「ポリテクセンター宮崎」にて,再就職のための準備をしている失業中の人たち257人(男性119人,女性102人,性別不明36人,平均年齢37.49歳)を対象に,感情の社会的共有とソーシャル・サポートが精神的健康に及ぼす影響について調査した。GHQ30を用いて測定された対象者の精神的健康度の平均は6.59,標準偏差は5.62であり,従来のサンプルに比べて特に低いことはなかったが, GHQ30得点が7点以上(不健康範囲)である対象者は男女とも45%を超えており,失業は精神的健康にとって大きな脅威であることが示された。失業に伴って経験される感情とその社会的共有行動について尋ね,それらと精神的健康度との関連を検討した結果,悲観的で不安を感じている人ほど精神的健康度が低いことが示された(r=.414, p<.001, Af=245)。さらに,経験された感情,感情の社会的共有と精神的健康度との関連を検討した結果,悲観・不安の感情経験に比べて,その社会的共有が少ないほど,GHQ30得点が高かった(r=.217,p<.001,N=245)。悲観的で不安を感じていても,それを他者に語ることができないと,精神的に不健康な状態になりやすいといえる。対象者が身の回りの人々からどのような支援(ソーシャル・サポート)を受けているかを検討したところ,情緒的な支援の多くは友人から提供されており,金銭的な援助は両親から提供されていた。一方,情報提供などの役割が期待される職安職員やポリテクセンター職員から情報的な援助を受けているとした対象者は少なかった.ソーシヤル・サポートの有無と精神的健康の間には有意な差は認められなかったが,職安職員やポリテクセンター職員など専門家による的確なサポートの必要性が示唆された。