著者
赤田 太郎 Taro Akada 四條畷学園短期大学 ライフデザイン総合学科 Shijonawate Gakuen Junior College
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 = Annual reports of Shijonawate Gakuen Junior College
巻号頁・発行日
vol.53, pp.57-64, 2020-12-25

本研究は、障がい学生支援の組織的枠組みがない小規模大学における課題や問題点を質問紙の調査によって明らかにし、小規模大学における障がい学生支援の現状と、研修実施による効果の検証と今後のあり方について検討した。その結果、相談場所がないと答えた人が42.9%にもおよび、相談場所のなさが浮き彫りとなった。また、相談場所のある教職員は、自身の周辺で相談を行っている現状だった。ICPを窓口機関として活用している職員がおり、これらを活用することが有効だと示唆された。支援の必要性に関する研修前後の変化としては、研修前は個人現状や学習支援、入学、生活などに関する必要性が多いが、研修後は大学組織や平等、権利や合理的配慮などの人権関連の項目が挙げられた。また困難さは、研修前は個人の障がい特性や学習支援配慮、時間などの個別対応が多かったが、研修後は教員や保護者、組織を生かした本質的な支援内容が挙げられた。組織的枠組みの意見については、研修前は個別の状況や目標、障がい支援の枠組みやサポート、授業や学習など、幅広いテーマが多いが、研修後は学園全体の単位で理解を広げ、窓口を置くことが大切、などが挙げられた。統計的にも今後の研修の必要性は優位に高まり(t=2.33,p<.05)、研修の有効性が証明された。これらの中で、大学の規模に関連する意見は見られなかったため、小規模による特殊な課題はなく、今後は規模にかかわらず学園全体としての組織的対応のシステム化が急務であることが示された。