著者
三木 大史 河野 俊寛 Hirofumi Miki Toshihiro Kono 四條畷学園短期大学ライフデザイン総合学科 東京大学先端科学技術研究センター Shijonawate Gakuen Junior College Research Center for Advanced Science and Technology
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 = Annual reports of Shijonawate Gakuen Junior College
巻号頁・発行日
vol.47, pp.26-30, 2014

言語の発達に遅れがない自閉症者と定型発達者の間でコミュニケーションが成り立つ場合と成り立たない場合の違いについて、その論理の違いを説明するため、数理論理学の手法を用いた数理モデルを提示する。自閉症者と定型発達者の間のコミュニケーションの実例を挙げて、双方の論理を構築した数理モデルの枠組みで具体的に説明する。コミュニケーションが成り立つ場合と成り立たない場合が起こるのは、双方の論理から導かれる理論の相違によるものであり、それは状況と言語の間の関係から生じるものである。このことを利用することによって、両者のコミュニケーション成立のための具体的な方法を説明でき、またその新たな方法を考えることができることを明らかにする。
著者
工藤 真由美 Mayumi Kudo 四條畷学園短期大学保育学科 Shijonawate Gakuen Junior College
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
no.40, pp.42-48, 2007

本稿は、いのちが希薄化した今日の社会情勢に鑑み、いのちの重み、大切さを実感できるような、実践的で本質的ないのちの授業を構想することがねらいであり、そのために過去の教育実践を紐解き、そのエッセンスを汲み取ることを主眼とする。横浜の浜之郷小学校の校長、大瀬敏昭氏は自身の闘病から死に至るまでを、その死と直面しつつ生きる心情、絶望と恐れ、希望と勇気を、それらを与えてくれた絵本との出会いというかたちで子どもたちに紹介していく。彼の自己の病状を包み隠さず、平易な言葉で子どもたちに語りかけていく「いのちの授業」の実践記録が、我々に示唆するところは大きい。それは、我々自身が人生から問われたものとして、真摯に日々生きる姿の中にこそ、真の「いのちの授業」が生まれてくるというものであり、また、最後まで学び続け変わることが人間の可能性であり、その点で死は人間にとって成熟する最後のチャンスであるということである。
著者
鍛治谷 静 Shizuka Kajiya 四條畷学園短期大学保育学科 Shijonawate Gakuen Junior College
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 = Annual reports of Shijonawate Gakuen Junior College
巻号頁・発行日
vol.48, pp.25-29, 2015

保育や教育の場で不適応行動が見られるものの、診断がつかないあるいは未受診の子どもは「グレーゾーン」と呼ばれる。医療と連携が進み、診断を得ることで子どもの個別ニーズが関係者に広く知られるようになったが、同時に「診断を得ていないこと」がことさら問題視されるようになった面もある。2013年のDSM-5の改訂のうち発達障害に関わる部分を取り上げ、これらグレーゾーンと呼ばれる子ども達の支援と関連づけて考察した。支援に必要なのは「個別性を見る目」と「そこからニーズを読み取ること」であり、これは保育者や教育者の専門性である。診断は子どもを理解するためのひとつの情報に過ぎない。保育者や教育者が「分からないこと(診断;医療)」があったとしても、「分かっていること(自らの専門性)」を生かすことで支援は十分可能である。
著者
赤田 太郎 Taro Akada 四條畷学園短期大学 ライフデザイン総合学科 Shijonawate Gakuen Junior College
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 = Annual reports of Shijonawate Gakuen Junior College
巻号頁・発行日
vol.53, pp.57-64, 2020-12-25

本研究は、障がい学生支援の組織的枠組みがない小規模大学における課題や問題点を質問紙の調査によって明らかにし、小規模大学における障がい学生支援の現状と、研修実施による効果の検証と今後のあり方について検討した。その結果、相談場所がないと答えた人が42.9%にもおよび、相談場所のなさが浮き彫りとなった。また、相談場所のある教職員は、自身の周辺で相談を行っている現状だった。ICPを窓口機関として活用している職員がおり、これらを活用することが有効だと示唆された。支援の必要性に関する研修前後の変化としては、研修前は個人現状や学習支援、入学、生活などに関する必要性が多いが、研修後は大学組織や平等、権利や合理的配慮などの人権関連の項目が挙げられた。また困難さは、研修前は個人の障がい特性や学習支援配慮、時間などの個別対応が多かったが、研修後は教員や保護者、組織を生かした本質的な支援内容が挙げられた。組織的枠組みの意見については、研修前は個別の状況や目標、障がい支援の枠組みやサポート、授業や学習など、幅広いテーマが多いが、研修後は学園全体の単位で理解を広げ、窓口を置くことが大切、などが挙げられた。統計的にも今後の研修の必要性は優位に高まり(t=2.33,p<.05)、研修の有効性が証明された。これらの中で、大学の規模に関連する意見は見られなかったため、小規模による特殊な課題はなく、今後は規模にかかわらず学園全体としての組織的対応のシステム化が急務であることが示された。