著者
Taslaman Caner
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.22, pp.77-101, 2007-03-20

本稿では、「テロterror」と「ジハードjihad」という2つの言葉がいかに誤った用いられ方をしているかを示し、そこでのレトリックが、異なる立場の人々の間の意思疎通の形成を阻害している事実を明らかにする。ここでの「レトリック」の意味は、主に政治的な目的に資するために、言葉を恣意的に用いることをいう。そもそも「権力」は、言葉の使い方を規程することを通じて、その力を行使する。そのゆえ、ここでは、言葉の使い方に現れるこの現象を、哲学的な観点から考察する。戦争に対するコーランの考え方については、倫理的な観点から考察する。コーランからえられるいくつかの重要な原則を提示する。また、同じく、個人的利益、誤解、伝統の影響、政治的な必要性などが、コーランを誤解させ、誤った解釈に導く原因となってきたこと、また、ハディースやファタワーによって覆されてきたことを示す。加えて、世界平和のために哲学が果たすべき役割についても、言及する。