著者
Upchurch Paul Tomida Yukimitsu Barrett Paul M
出版者
国立科学博物館
雑誌
National Science Museum monographs (ISSN:13429574)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.i-118, 2004

1993年,アメリカ・ワイオミング州サーモポリス近郊に露出するモリソン層(ジュラ紀後期,キンメリジアン〜チトニアン)から,アパトサウルスのほぼ完全な骨格が発掘された.この標本は東京の国立科学博物館が入手し,組み立てられて展示標本として一般に公開されている.この新しい標本を詳細に記載することにより,属の再定義および種レベルの分類に有効な,新たな解剖学的データを得た.アパトサウルスに同定された標本を個体レベルで分岐解析した結果,これまでわかっていなかった系統関係が明らかとなり,あわせてA. ajax(模式種),A. excelsus, A. louisae, A. parvus(新組合せ)の4種が有効と認められた.A. parvusは,ワイオミング州シープクリークのモリソン層から産した'Elosaurus' parvusの標本をもとにした種である.分岐解析の結果,アパトサウルスの東京標本はA. ajaxに同定される. これまではアパトサウルス属の模式種であるA. ajaxにっいての詳しい記載がなかったため,本研究が本種についてのもっとも詳しい記載論文ということになる.また,改定された属および種の定義によって,これまでアパトサウルスに固定されてきたいろいろな標本(オクラホマ州産の幼体標本を含む)の再評価が可能となった.
著者
Kobayashi Yoshitsugu Tomida Yukimitsu Kamei Tadao Eguchi Taro
出版者
国立科学博物館
雑誌
National Science Museum monographs (ISSN:13429574)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.i-121, 2006

中期更新統の大阪層群から発見されたマチカネワニ(Toyotamaphimeia machikanensis)の模式標本について,本論文で詳細な再記載を行った.系統解析は,48分類群(2外群)の165形質を使って行った.その結果,420ステップで323個の最節約樹が得られた.厳密合意樹は,マチカネワニが明らかにマレーガビアル亜科(Tomistominae)に含まれることと,同亜科の唯一の現生種(マレーガビアルTomistoma schlegelii)の姉妹群であることを示している.さらに,系統樹の樹形は,マレーガビアル亜科がヨーロッパで起源したあとマチカネワニとマレーガビアルの分岐群が40万年前までに東アジアに拡散してきたことを支持し,これまでの研究と整合性を持つ.マチカネワニの定義についても改定した.従来は上顎の最大の歯は7番目と言われていたが,実際には12,13番目の方が7番目より大きい.上顎の7番より後方の歯はそれより前方の歯に比べてより密に並ぶ.上顎の8番から12番の歯は,かみ合ったときに下顎の歯の外側に位置するが,13番から16番の歯は対応する下顎歯と噛みあうことから,後方の歯は破砕の用途に使われたと考えられる.岸和田市から発見された類似のマレーガビアル亜科のワニ化石は,以前にはマチカネワニと考えられていたが,マチカネワニとは異なる分類群で,より原始的な種の可能性がある.