著者
宮崎 信之 YANG Jian
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

有機スズ化合物は船底塗料や漁網の汚染防止剤などにつかわれ、世界各地で海洋環境に深刻な影響を及ぼしている。本研究では、中国と日本の代表的な水生動物に注目して、その汚染実態と生物影響を調査することを目的としている。(1)中国では、これまで有機スズの研究が少ないので、有機スズ化合物に関する規制が皆無である。本研究では、中国の太湖に五つの調査点を設け、指標生物ドブ貝(Anodonta woodiana)を採集し、プチルスズ(TBT、DBT、MBT)とフェニルスズ(TPT、DPT、MPT)化合物質を測定した。その結果、プチルスズとフェニルスズ化合物質が両方とも初めで検出された。その上、両類汚染物質が有意な地域の濃度差異が見られた。(2)日本三陸沿岸産イシイルカ(Phocoenoides dalli)の親子個体の組織濃度と負荷量を研究し、TBT、DBT、MBT及びTPT、DPT、MPTの蓄積の実態と親子の移行の実証及び特徴を明らかにした。更に、イシイルカ体内のプチルスズとフェニルスズ化合物質の代謝能力、特異的な蓄積臓器としての肝臓におけるチトクロムP450の活性の関係の比較研究を行った。その結果、プチルスズよりフェニルスズ化合物質に対する代謝能力が明らかに弱いことを発見した。これらの一連の研究は水生生物における有機スズ類汚染物資の蓄積、代謝及び毒性のメカニズムの解明に関する重要な知見が得られた。
著者
伊藤 紳三郎 YANG Jian
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究は、ブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造内における高分子鎖のコンホメーションを単一分子レベルで観察することにより、ブロック鎖の特異な形態について明らかにすることを目的としている。本年度は、ブロック共重合体のミクロ相分離構造内に混合したホモポリマー成分のコンホメーションをSNOMによる直接観察によって評価した。試料として、ポリスチレン(PS)-ポリメチルメタクリレート(PMMA)のブロック共重合体を用いた。それぞれのブロック成分の重合度は8350および8570であり、対称な構造を有する。これに蛍光ラベルされたPMMAホモポリマーを微量に混合し、成膜後、クロロホルム蒸気雰囲気下にてアニーリングを行った。ここで、ブロックポリマー中のPMMAセグメントはフルオレセインにより、ホモポリマーPMMAはペリレンによって蛍光ラベルされており、それぞれの成分のみを選択的に観察することが可能である。フルオレセイン蛍光観察によって、ミクロ相分離構造の観察を行ったところ、PS-PMMAは156nmの間隔のラメラ状相分離構造を呈した。同一視野においてペリレン蛍光を検出することで、PMMAホモポリマー鎖の選択観察を行ったところ、ホモPMMAはすべてミクロ相分離構造内のPMMAドメイン内に局在していることが明らかとなった。ラメラPMMAドメイン内におけるホモPMMAの重心位置とそのコンホメーションとの相関について詳細に検討したところ、ラメラドメイン中央に存在するホモPMMA鎖は、ラメラ層に平行に配向していることが明らかとなった。一方、PS-PMMA相の界面付近に存在するホモPMMA鎖は、相界面に対して垂直に配向する傾向があることが分かった。ミクロ相分離構造の界面においてブロックポリマー鎖は界面近傍において特に強く配向していると考えられ、このブロックポリマー鎖の配向に依存して界面近傍に存在するホモPMMA鎖も界面に垂直方向に配向するものと思われる。