- 著者
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四方 由美
Yumi SHIKATA
- 雑誌
- 宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.61-69, 2004-03-20
現在、日本では男女共同参画をめぐってバックラッシュが起こっている。保守派の主張する争点は、①「らしさ」のしばりから自由を求める男女共同参画の動きは、あるべき「らしさ」を否定し、日本の文化や男女関係を破壊するのではないか、②「専業主婦」否定の動きではないか、③家族の絆を破壊するのではないかなどである。このようなバックラッシュが起こる背景には、フェミニズムに対するバックラッシュの高まりに加えて、男女共同参画の政策化にともなう反発があると考えられる。 また、バックラッシュは保守派によるものだけではない。男女共同参画を推進する立場にある立法・行政サイドにおいて、男女共同参画社会基本法に盛り込まれた「ジェンダー概念に基づく男女平等」の理念に対する理解が進まないため、この理念が運用面で排除される傾向がみられる。こうした動きは男女共同参画社会の推進を阻むだけでなく、新たな差別を生む事態に陥っている。男女共同参画についての政策そのものが矛盾を孕んでいることは、その大きな要因の一つである。 本稿では、このような観点から今日のバックラッシュ現象を考察することを通して、男女共同参画をめぐる議論を整理する。