著者
柴田 義貞 ZHUNUSSOVA Tamara ZHUNUSSOVA T.
出版者
長崎大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

カザフスタン共和国のセミパラチンスク核実験場周辺地域住民における放射線被曝の影響を明らかにすることを目的として、乳がんの症例対照研究をセミパラチンスク市内にあるがんセンターとの共同研究として開始した。対象者は、1935年から1962年までに生まれ、核実験場周辺に在住する女性のうち、1980年から2005年までに原発性乳がんの診断された患者(症例)と、1症例に2人を年齢でマッチさせて選択した対照である。事前にがんセンターと緊密な連絡をとり、症例約100名と対照約200名のリストを作成し、2005年8月上旬に約1週間をかけて現地の診療所を回って面接調査をした結果、85人の症例と163人の対照から、居住歴、現在の生活状況、がんの家族歴、妊娠・出産歴、哺乳、食事、飲酒、喫煙、職業などの情報を得た。本年度は,これらの対象者の被曝線量推定のため、現地を訪問して居住歴の追加調査を行うとともに、対象者が居住していた村の緯度、経度、高度を測定した。これらのデータを日本に持ち帰り、国内研究者の協力を得て、対象者個人の被曝線量の推定を開始し、対象者の67%(166人)について被曝線量の推定が完了している。推定被曝線量は0-954.7mGyにわたっており、分布の25%点、50%点、75%点はそれぞれ0mGy、0.25mGy、30.7mGyであった。残りの対象者について、引き続き線量推定を行っている。