著者
Zarza-Silva Hugo A. 丸尾 達 高垣 美智子 北条 雅章 篠原 温
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.45-52, 2005-03-01

実用規模の毛管水耕システム(CHS)を作成し, 熱帯条件下でのサラダナ栽培における適用性を調査することを目的とし, 2001年春, 夏, 秋の計3作栽培を行った.それぞれの実験で, ハウス内気温2水準(25-30℃, 30-35℃)と培養液流速2水準(50, 80ml・min^<-1>・m^<-1>)を設け, それぞれを組み合わせた4水準の処理を行った.どの季節においても, 気温の低い設定の処理区で良い生育を示した.夏の高温処理条件下では, 培養液中の溶存酸素濃度が低くなるため, それが補償できる流速の速い処理区での生育が良かった.植物体の品質, 葉色は温度処理, 流速処理による影響を受けなかったが, 季節の違いによる影響は見られ, 春と秋の栽培では, 葉色, 硝酸濃度が高くなり, 夏の栽培では, 葉色が淡く, また, ビタミンC濃度は高くなった.パラグアイおよびタイにおける, CHS作成にかかる材料費を, 現地の価格で算出したところ, それぞれ栽培面積1000m^2当たり665,950円, 659,100円であった.熱帯諸国で算出される材料費は日本で算出される材料費の3分の1程度であった.本実験より, CHSを用いた高品質サラダナの栽培は, 熱帯の気候条件下でも安定的に行うことができると考えられる.