著者
塚越 覚 丸尾 達 伊東 正 扶蘇 秀樹 岡部 勝美
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1022-1026, 1999-09-15
被引用文献数
1 2

NFT毛管水耕システムを用いたホウレンソウ(Spinacia oleracea L.品種'ジョーカー'および'オリオン')栽培において, 収穫前にNO_3-Nのみの補給停止(実験1 : 夏作), または全肥料成分の補給停止(実験2 : 秋作)が, 生育, 可食部の硝酸含量, 廃液の無機成分濃度に及ぼす影響を検討した.実験1 : 収穫6日前からのNO_3-Nの補給停止で, 可食部の硝酸含量は2, 199 ppm, 廃液のNO_3-N濃度は1.0 me・liter^<-1>と, 食品・廃液の許容基準を満たすことができた.NO_3-N以外の成分は初期濃度と同じか, それ以上に廃液中に残存した.実験2 : 2&acd;6日前からの追肥停止で, 廃液のNO_3-N濃度は0.7 me・liter^<-1>以下, 可食部の硝酸含量は2, 870 ppm以下となり, 食品・廃液の許容基準を満たすことができた.さらに, 他の主要無機成分についても, 残存濃度を低減できた.しかし, 6日前からの追肥停止では, 地上部生体重が低下した.以上より, 夏作で収穫予定日の6日前, 秋作では2&acd;4日前から, 肥料成分を含まない水を補給する方法が, 可食部の硝酸濃度の低いホウレンソウの生産と, 廃液中の主要無機成分含量の低減に有効と考えられた.
著者
石井 雅久 伊東 正 丸尾 達 鈴木 皓三 松尾 幸蔵
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.103-111, 1995-06-30 (Released:2010-06-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

完全制御型植物工場の電力コストを削減させるために, 一般電力と比べて割安な深夜電力 (11pm~7am) の利用について, 『岡山サラダナ』を供試し, 光強度と照射時間の関係から調査・検討を行った.生育中期までは, PPFDならびに照射時間の増加とともに葉の生体重および乾物重は増加したが, 後期から腋芽葉の発生や葉捲きが多く発生し, サラダナの生育は遅延し, 生産物の品質は低下した.また, 1回の明期に照射する光量子の積算値が等しければ, サラダナの生育や品質も同様になると推察された.以上のことから, 本試験の照射条件のなかでは, PPFDが400~420μmol・m-2・s-1, 照射時間が8時間で生育したサラダナが生育や品質などの面から効率的であることがわかり, 深夜電力の利用による栽培の実用的可能性が示唆された.
著者
カンサ ジョージ オデュロ 丸尾 達 篠原 温 伊東 正
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.118-122, 1996-09-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
21

スイカ (Citrulus lanatus Thunb.) 2品種 (‘Baoguan’, ‘Xinlan’) を供試し, 光照度 (50%, 100%) と気温 (33℃, 38℃) が, 光合成速度 (Pr) , 蒸散速度 (E) , 気孔伝導度 (gs) , 細胞内CO2濃度 (Ci) , および果実収量・糖度に及ぼす影響を調査した.高照度下で生育した植物体のPr, E, gsは, 低照度下でのものより高かった.品種について比較すると, いずれの気温でも高照度条件下で, ‘Baoguan’のPr, E, gsおよび収量が, ‘Xinlan’よりも高かった.光合成速度と蒸散速度, および気孔伝導度と収量の間には, 統計的に有意な正の相関が, また, 光合成速度と細胞内CO2濃度との間には負の相関が認められた.果実糖度 (Brix) は, 両品種ともに12.0~13.5の範囲にあり, 処理による影響は認められなかった.スイカの生育, 収量は, 遮光により低下したが, 50%遮光条件下でも実際栽培上の問題はなく, さらに光強度が高い熱帯アグロフォレストリー地域においては, 適度な遮光下でも十分に栽培が可能と推察された.
著者
植木 敏晴 松村 圭一郎 丸尾 達 畑山 勝子 土居 雅宗 永山 林太郎 伊原 諒 野間 栄次郎 光安 智子 松井 敏幸
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.116-122, 2015-02-25 (Released:2015-03-24)
参考文献数
18
被引用文献数
2

自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)の国際分類における2型(type 2)の頻度は,北アメリカ(14%)やヨーロッパ(13%)に比し,アジア(4%)では低値である.本邦における炎症性腸疾患に合併するtype 2 AIPは,国際調査によるtype 2 AIPと異なり,黄疸がなく,腹痛の頻度が高かった.膵頭部腫大例は約半数で,下部胆管狭窄例は10%程度であった.膵管狭細化は多くが全膵管の2/3以上の長さで,膵石の合併はなかった.炎症性腸疾患以外の膵外病変の頻度は低かった.ステロイド投与例は約半数で,約1/3が保存的に経過観察されていた.切除例は少なかった.本邦のtype 2 AIPは,膵のコア生検による十分な膵組織と,臨床医と病理医との緊密な連携によりさらに解明されるであろう.
著者
Zarza-Silva Hugo A. 丸尾 達 高垣 美智子 北条 雅章 篠原 温
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.45-52, 2005-03-01

実用規模の毛管水耕システム(CHS)を作成し, 熱帯条件下でのサラダナ栽培における適用性を調査することを目的とし, 2001年春, 夏, 秋の計3作栽培を行った.それぞれの実験で, ハウス内気温2水準(25-30℃, 30-35℃)と培養液流速2水準(50, 80ml・min^<-1>・m^<-1>)を設け, それぞれを組み合わせた4水準の処理を行った.どの季節においても, 気温の低い設定の処理区で良い生育を示した.夏の高温処理条件下では, 培養液中の溶存酸素濃度が低くなるため, それが補償できる流速の速い処理区での生育が良かった.植物体の品質, 葉色は温度処理, 流速処理による影響を受けなかったが, 季節の違いによる影響は見られ, 春と秋の栽培では, 葉色, 硝酸濃度が高くなり, 夏の栽培では, 葉色が淡く, また, ビタミンC濃度は高くなった.パラグアイおよびタイにおける, CHS作成にかかる材料費を, 現地の価格で算出したところ, それぞれ栽培面積1000m^2当たり665,950円, 659,100円であった.熱帯諸国で算出される材料費は日本で算出される材料費の3分の1程度であった.本実験より, CHSを用いた高品質サラダナの栽培は, 熱帯の気候条件下でも安定的に行うことができると考えられる.