著者
Hasegawa Kenji de Laar Tom
出版者
横浜国立大学留学生センター
雑誌
横浜国立大学留学生センター教育研究論集 (ISSN:18810632)
巻号頁・発行日
no.20, pp.69-92, 2012

本稿はドイツと日本の赤軍が台頭した歴史的背景、及び映画における表象について考察する。1960年代後半以降の学生運動等の過激化、ドイツ及び日本政府のベトナム戦争への関与、高度消費社会の蔓延等、ドイツと日本の赤軍の出現には同時代的要素が多数あった。両国の赤軍派は大規模なテロ事件を引き起こす等、活動スタイルの類似点もあったが、日本の場合は浅間山荘事件と言う一つの事件が圧倒的な意義をもつようになった。赤軍派を取り上げる映画はドイツの方が多数存在するが、特に近年のAndres Veielによる一連の映画は以前の表彰ではなされなかった形で、「テロ」現象を冷静に、真っ向から再考している。日本の若松孝二も、これまでになかった真摯なアプローチで、連合赤軍をとらえ直している。Veielと若松の映画を比較考察する際、一つの顕著な違いは後者の「怒り」である。これは、両者の個人的な要素のみならず、日本とドイツにおける左翼テロリズムと戦後史の性格及び認識の違いによるものでもある。