- 著者
-
中原,光春
- 出版者
- 地域安全学会
- 雑誌
- 地域安全学会論文報告集
- 巻号頁・発行日
- no.4, 1994-08
近年日本各地では釧路沖地震、能登半島沖地震、さらには奥尻島に多大な被害を与えた北海道南西沖地震とあいついだ。また、本年は新潟地震から30周年に、昨年は関東大地震から70周年にあたっていた。一方、防災啓蒙の観点でいうと、災害が繰り返すにもかかわらず、防災意識はその継続が難しいとも言われている。本論文は、関東では1923年の関東大地震以来、大規模の地震が発生していないことから、どうしても低下しがちな防災意識を、一つの興味ある例題を実施することで、歴史的な関心と現代技術への興味を高め、防災意識の向上をめざすものとして位置付けられる。とりあげた例題は、明治23年に建設された当時の超高層ビル"浅草凌雲閣"である。この建物は1923年の関東大地震で崩壊した。この崩壊を防ぐため現代技術を70年前にタイムスリップさせ、救済のシミュレーションを実施したものである。その結果現代技術は多くの難問を克服できることが判明した。しかし、著者は地震はあくまで人知を超えたものであり、謙虚に技術の発展を捉え、今後の技術開発の重要性を認識すべきであると主張したい。なお、本論文は、(財)震災予防協会の発行する「地震工学振興会ニュース」No.136号に掲載されたものである。